職場の特定の人物から発せられる臭いが原因で、仕事に集中できずに悩むケースは少なくありません。
この問題は非常にデリケートであるため、どのように対処すればよいか分からず、一人で抱え込んでしまう人も多い状況です。
この記事では、職場の臭いに耐えられないと感じたときに試せる具体的な対策について、段階的に解説します。
自分でできる応急処置から、角を立てずに相手へ伝える方法、会社全体で取り組むべき予防策まで、円満な解決を目指すためのヒントを提供します。
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職場の「臭い」はハラスメント?スメハラの基礎知識
スメルハラスメント(スメハラ)とは、体臭や口臭、香水、タバコなど、臭いによって周囲の人に不快感を与え、働く環境を悪化させる行為を指します。
意図的であるかどうかにかかわらず、相手が不快に感じればハラスメントに該当する可能性があります。
労働者の健康や安全な職場環境を維持する義務が会社にはあるため、スメハラは個人の問題として片付けられるものではありません。
この問題が原因で業務に支障が出たり、健康被害が生じたりした場合は、会社が安全配慮義務違反を問われる可能性も考えられます。
なぜ?職場で気になる「臭い」の代表的な原因
職場で不快感の原因となる臭いは、さまざまな要因から発生します。
代表的なものとして、本人が気づきにくい体臭や加齢臭、口臭が挙げられます。
また、喫煙者の衣類や髪に染み付いたタバコの臭いや、良かれと思って使用している香水や柔軟剤の強すぎる香りも、周囲にとっては苦痛になることがあります。
さらに、昼食に食べたニンニク料理などの食べ物の臭いが、午後のオフィスに充満してしまうケースも少なくありません。
これらの臭いは、無意識のうちに周囲の集中力を削ぎ、人間関係に影響を与えることもあります。
自分では気づきにくい体臭や加齢臭
体臭や加齢臭は、自分自身の鼻がその臭いに慣れてしまうため、本人に自覚がない場合がほとんどです。
汗や皮脂が細菌によって分解されることで発生し、食生活やストレス、加齢といった要因が複雑に絡み合って臭いの強さが変化します。
特にミドル脂臭や加齢臭は、年齢とともに皮脂の成分が変化することで生じる特有の臭いです。
本人は清潔にしているつもりでも、周囲には不快に感じられることがあるため、非常にデリケートな問題となります。
悪気がない分、他者からの指摘が難しく、問題が長期化しやすい傾向にあります。
会話の妨げになるほどの口臭
口臭は、対面でのコミュニケーションに直接的な影響を与える深刻な問題です。
主な原因は、歯周病や虫歯、舌苔といった口内環境のトラブルですが、胃腸の不調や糖尿病などの内臓疾患が隠れている可能性も否定できません。
強い口臭は、会話する相手に大きな不快感を与え、会議や商談などの重要な業務に支障をきたす恐れがあります。
臭いを気にするあまり、相手が距離を取ったり、会話を早めに切り上げようとしたりすることで、円滑なコミュニケーションが阻害され、職場の人間関係にも悪影響を及ぼしかねません。
衣類や髪に染み付いたタバコの臭い
喫煙者が吐き出す煙だけでなく、その衣類や髪、持ち物などに染み付いたタバコの臭い(三次喫煙)も、非喫煙者にとっては強い不快感の原因となります。
喫煙直後はもちろん、時間が経っても臭いの粒子は残り続け、エレベーターや会議室のような密閉された空間では特に強く感じられます。
本人は臭いに慣れてしまっているため、自分が周囲にどれだけ影響を与えているか気づいていないケースがほとんどです。
換気扇の下で吸っていても、体や服についた臭いは簡単に消えないため、職場全体の空気環境を悪化させる要因になります。
香りが強すぎる香水や柔軟剤
身だしなみの一環として使用される香水や柔軟剤、整髪料なども、その香りが強すぎるとスメルハラスメントの原因になります。
香りの好みは人によって大きく異なり、ある人にとっては心地よい香りでも、他の人には不快な化学物質の臭いとしか感じられない場合があります。
特に、化学物質過敏症など、特定の香りで頭痛や吐き気といった体調不良を引き起こす人もいます。
オフィスのような閉鎖された空間では香りが拡散しやすく、逃げ場がないため、使用する本人には節度を持った使用が求められます。
昼食後などに漂う食べ物の臭い
昼食で食べたものが、午後の執務時間中も臭いの原因となることがあります。
特にニンニクやニラ、香辛料を多く使った料理、カップラーメン、ファストフードなどは、臭いが強く残りやすい傾向にあります。
自分のデスクで食事をする場合、その臭いがフロア全体に広がり、他の従業員の集中力を妨げてしまう可能性があります。
食後の口臭だけでなく、弁当箱やゴミ箱から漂う臭いも問題になることがあります。
食事は個人の自由ですが、多くの人が共有する空間であるオフィスでは、メニュー選びにも一定の配慮が求められる場合があります。
職場の臭い問題を放置してはいけない3つの理由
職場の臭い問題は、単なる個人の感覚の違いとして軽視されがちですが、放置すると深刻な事態に発展する可能性があります。
不快な臭いは従業員の集中力を著しく低下させ、生産性の悪化に直結します。
また、臭いが原因で特定の社員が避けられるようになると、コミュニケーションが減少し、チームワークが乱れるなど人間関係の悪化にもつながります。
さらに、臭いの発生源である本人に自覚がないケースが多いため、問題が表面化しにくく、水面下で多くの従業員がストレスを溜め込むことになりかねません。
仕事への集中力が削がれてしまう
不快な臭いは、人間の脳に直接働きかけ、強いストレスや不快感を引き起こします。
これにより、思考が中断されたり、気分が悪くなったりして、本来の業務に集中することが困難になります。
特に、創造的な思考や精密な作業が求められる業務において、その影響は顕著に現れます。
作業効率が低下するだけでなく、ミスが増える原因にもなりかねません。
個人のパフォーマンスが落ちることは、結果的にチームや組織全体の生産性の低下につながるため、職場環境の問題として捉え、早急に対処することが必要です。
職場の人間関係が悪化する恐れがある
臭いの問題は、職場の人間関係に深刻な亀裂を生じさせる可能性があります。
臭いの原因となっている人物を、他の従業員が陰で非難したり、無意識に避けたりするようになると、職場内に気まずい空気が流れます。
コミュニケーションが不足することで、業務上の連携がうまくいかなくなったり、孤立する人が生まれたりするかもしれません。
また、我慢の限界に達した誰かが感情的に指摘してしまい、トラブルに発展するケースも考えられます。
健全な人間関係は円滑な業務遂行の基盤であり、臭い問題がその基盤を揺るがす前に手を打つべきです。
本人に自覚がなく指摘しづらい
スメルハラスメントが他のハラスメントと比べて解決が難しい一因は、加害者とされる本人に悪意や自覚がない点にあります。
自分の臭いは慣れてしまって気づきにくいため、周囲に不快感を与えているとは夢にも思っていないことがほとんどです。
そのため、周囲の人間も「傷つけてしまうかもしれない」「逆恨みされたらどうしよう」と考え、指摘することをためらってしまいます。
結果として、誰も問題を切り出せないまま状況は改善されず、多くの人がストレスを抱え続けるという悪循環に陥ってしまうのです。
【自分でできる】耐えられない職場の臭いを和らげる応急処置
本人に直接伝えたり、会社に相談したりする前に、まずは自分でできる範囲で状況を改善できないか試してみましょう。
角を立てずに問題を緩和させるための、いくつかの応急的な対応策があります。
例えば、自分のデスク周りの空気をきれいに保つ工夫をしたり、換気を促したりする方法が考えられます。
これらの方法は、直接的な対立を避けつつ、不快な環境を少しでも快適にするための第一歩です。
自分の心身を守るためにも、実践可能なものから取り入れてみてください。
デスクに小型の空気清浄機や消臭剤を置く
自分のパーソナルスペースだけでも快適に保つため、デスク上に設置できる小型の空気清浄機や卓上ファンを置くのは有効な手段です。空気清浄機は周囲の臭いの粒子を吸い込み、空気を浄化してくれます。
また、無香料または香りの弱い消臭剤を置くことで、不快な臭いを中和させる効果も期待できます。ただし、香りの強い芳香剤は、別のスメハラの原因になりかねないため避けるべきです。
あくまで自分の周囲の空気を改善することが目的であるため、他の人に迷惑がかからないよう、静音性の高いコンパクトな製品を選ぶ配慮も必要になります。
定期的に窓を開けて室内の空気を入れ替える
室内にこもった臭いを外に逃がし、新鮮な空気を取り入れる換気は、最も手軽で効果的な対策の一つです。
職場のルールや環境にもよりますが、可能であれば1時間に1回程度、数分間窓を開けて空気の入れ替えを行いましょう。
自分一人で窓を開けにくい場合は、「少し空気を入れ替えませんか?」と周囲に声をかけることで、自然な形で換気を促すことができます。
これにより、特定の臭いだけでなく、室内のよどんだ空気全体がリフレッシュされ、他の従業員にとっても快適な環境づくりに貢献できます。
アロマオイル付きのマスクで気分を変える
どうしても臭いが気になって集中できない時の対策として、マスクの活用が挙げられます。
通常のマスクでもある程度の効果は期待できますが、心地よい香りで気分をリフレッシュしたい場合は、アロマオイル(精油)を活用できます。精油の原液を直接マスクに垂らすと、皮膚への刺激や香りの強さから危険な場合があるため注意が必要です。
アロマスプレーとして希釈してマスクの外側にスプレーしたり、ティッシュやコットンに1〜2滴垂らしてマスクの内側に挟む方法が推奨されています。この際、精油が直接肌に触れないようにすることが大切です。
ハッカ油や柑橘系など、清涼感のある香りは仕事中の気分転換にも適しています。ただし、香りが強すぎると呼吸器への刺激や周囲への影響も考えられるため、ごく少量にとどめるのがマナーです。
可能であれば上司に座席の変更を願い出る
様々な対策を試しても改善が見られず、心身に不調をきたすほど耐えられない状況であれば、上司に相談して座席の変更を申し出ることも検討すべきです。
その際、特定の個人を名指しして非難するのではなく、「窓際の光が強くて集中できない」「空調の風が直接当たって体調が優れない」など、臭い以外の客観的な理由を添えて相談すると、角が立ちにくくなります。
正直に「特定の臭いが原因で体調が悪くなる」と伝える場合も、あくまで自身の体質の問題として相談する姿勢が、円滑な解決につながります。
【最終手段】角を立てずに本人へ伝えるための上手なアプローチ方法
自分でできる対策を尽くしても状況が改善しない場合、最終手段として本人に伝えることを検討する必要があります。
しかし、伝え方を誤ると相手を深く傷つけ、人間関係を悪化させてしまう危険性があります。そのため、細心の注意を払ったアプローチが不可欠です。
直接的に「臭い」と指摘するのではなく、相手の健康を気遣う形や、一般的な話題として切り出すなど、間接的で柔らかい伝え方を工夫することが重要です。
ここでは、相手への配慮を忘れず、かつ問題を解決に導くための方法を紹介します。
「体調が悪いのでは?」と健康を気遣う形で切り出す
臭いを直接指摘するのではなく、「最近お疲れのようですが、体調は大丈夫ですか?」
「口の渇きは体調不良のサインでもあるらしいですよ」といったように、相手の健康を気遣う言葉をきっかけにする方法があります。
急な体臭や口臭の変化は、内臓疾患などの病気のサインである可能性も考えられます。
そのため、純粋に相手を心配する姿勢で伝えることで、攻撃的な意図がないことが伝わりやすくなります。
このアプローチにより、本人が自らの体調や生活習慣を見直すきっかけとなり、結果的に臭いの問題が改善される可能性があります。
複数人でいるときに身だしなみの話題として提起する
1対1の状況で指摘すると、相手は個人攻撃と受け取ってしまいがちです。
そこで、ランチタイムや休憩中など、複数人がいる自然な会話の中で、身だしなみに関する話題を出すという方法が考えられます。
「夏場は汗の臭いが気になるから、新しい制汗剤を試している」「この柔軟剤、香りが強すぎないかな?」など、自分自身や一般的な話題として切り出すことで、特定の個人を対象にしているという印象を和らげることができます。
これにより、対象者も「自分も気をつけよう」と、自発的に気づいてくれる可能性が高まります。
信頼できる上司や人事部から伝えてもらう
自分で伝えることにどうしても抵抗がある場合や、伝えても改善されない場合は、信頼できる第三者に介入を依頼するのが最も安全で効果的な方法です。
直属の上司や人事部の担当者など、公平な立場の人物から伝えてもらうのがよいでしょう。
その際、「個人の苦情」としてではなく、「職場全体の労働環境を維持するため」という客観的な視点から伝えてもらうことが重要です。
会社としての指導であれば、本人も個人的な感情で反発することなく、事態を冷静に受け止めやすくなり、具体的な改善行動につながる可能性が高まります。
会社全体で取り組むべきスメルハラスメントの防止策
スメルハラスメントは個人の問題ではなく、職場環境に関わる組織全体の問題として捉える必要があります。
従業員一人ひとりが快適に働ける環境を整備することは、会社の責務です。
そのためには、個人任せにするのではなく、会社として明確な方針を示し、具体的な防止策を講じることが不可欠です。
身だしなみに関するガイドラインの策定や、ハラスメント研修の実施、相談しやすい窓口の設置など、組織的なアプローチによって、臭いの問題が発生しにくい職場文化を醸成していくことが求められます。
身だしなみに関するガイドラインを社内で共有する
スメルハラスメントの予防策として、就業規則や社内マニュアルの中に、身だしなみに関する具体的なガイドラインを盛り込むことが有効です。
例えば、「過度な香水や香りの強い柔軟剤の使用は控える」「清潔な服装を心がける」「勤務中の喫煙後は口臭ケアを行う」といった項目を明記します。
このようにルールを明文化し、全社員に周知徹底することで、臭いに関する一定の基準が社内で共有されます。
これにより、個人の感覚に頼るのではなく、誰もが客観的なルールに基づいて行動できるようになり、トラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。
ハラスメント研修で臭いの問題を取り上げる
セクシャルハラスメントやパワーハラスメントと同様に、スメルハラスメントも人権侵害につながる問題であるという認識を社内に広めることが重要です。
そのための有効な手段が、全従業員を対象としたハラスメント研修です。
研修の中で、スメルハラスメントの定義や具体例、他者に与える影響などを学ぶ機会を設けます。
これにより、従業員は自分自身が意図せず加害者になるリスクを認識し、日々の身だしなみや行動に配慮する意識が高まります。
臭いの問題が個人のデリケートな問題ではなく、職場全体の課題であるという共通認識を育むことができます。
誰もが相談しやすい窓口を設置する
臭いの問題で悩んでいても、誰に相談すればよいか分からず一人で抱え込んでしまう従業員は少なくありません。
そうした状況を防ぐため、人事部やコンプライアンス部門などに、ハラスメント全般に関する相談窓口を設置することが極めて重要です。
その際、匿名での相談を可能にしたり、プライバシーの保護を徹底したりするなど、従業員が安心して利用できる体制を整える必要があります。
相談窓口があることで、問題が深刻化する前に会社が状況を把握し、適切な対応を取ることが可能になります。
これにより、従業員が安心して働ける環境の維持につながります。
まとめ
職場の臭いの問題は、多くの人が悩むデリケートな課題ですが、決して解決できないわけではありません。
まずは空気清浄機の設置や換気といった、自分でできる応急処置から試すことが第一歩です。
それでも改善が見られない場合は、相手を傷つけない伝え方を工夫したり、上司や人事部といった第三者に相談したりするなど、段階的な対策を検討することが重要です。
また、この問題は個人間のトラブルではなく、会社全体で取り組むべき職場環境の問題でもあります。ハラスメント研修やガイドラインの策定といった組織的な対策を通じて、誰もが快適に働ける職場を目指していく視点が求められます。