Microsoftが提供するOfficeLTSC2024とは、特定の法人向けに設計された永続版ライセンスのオフィススイートです。
本製品は、サブスクリプションモデルであるMicrosoft365とは根本的に異なり、一度購入すれば永続的に利用できる点が最大の特徴です。
この記事では、OfficeLTSC2024とMicrosoft365の具体的な違いを比較し、どちらのライセンスが自社のビジネス環境に最適かを判断するための情報を提供します。
法人としての利用目的やコスト、運用方法を考慮し、適切な製品選択を行うための参考にしてください。
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Office LTSCとは?特定用途向けの法人向け永続ライセンス版
OfficeLTSC(Long-TermServicingChannel)とは、一度の購入で永続的に利用権が得られる、買い切り型の法人向けライセンスです。
このライセンスとは、頻繁な機能更新を必要とせず、長期間安定した環境が求められる特定用途向けの製品として位置づけられています。
例えば、インターネット接続が制限される製造現場の端末や、業務アプリケーションとの互換性を維持するために機能の変更を避けたい端末などが主な対象です。
OfficeLTSCは、新機能の追加アップデートは行われず、セキュリティ更新が中心となるため、常に同じ操作性を維持できるという特徴があります。
Office LTSCとMicrosoft 365の主な違いを徹底比較
Office LTSCとMicrosoft 365は、同じOfficeアプリケーションを提供する製品でありながら、提供形態や機能、コスト構造において大きな違いがあります。
永続ライセンス版であるOffice LTSCと、サブスクリプション版のMicrosoft 365を比較検討することは、自社のIT戦略を策定する上で不可欠です。
ライセンス形態、料金体系、機能アップデートの有無、利用可能なサービス範囲など、多角的な視点から両製品を比較し、それぞれの特性を理解することが、最適な選択につながります。
ライセンス形態:買い切り型かサブスクリプション型か
OfficeLTSCとMicrosoft365の最も根本的な違いはライセンス形態にあります。
OfficeLTSCは、一度購入すれば永続的にソフトウェアを使用する権利を得られる「買い切り型(永続ライセンス)」です。
これに対し、Microsoft365は月額または年額の利用料を支払い続けることでサービスを利用する「サブスクリプション型」となります。
そのため、LTSCは初期導入コストとして計上され、Microsoft365は継続的な運用コスト(OPEX)として扱われます。
どちらの形態が適しているかは、企業の予算計画やIT資産の管理方針によって異なります。
また、選択するエディションによって利用できるアプリケーションの種類も変わるため、必要なソフトウェア構成も考慮する必要があります。
料金体系:初期費用のみか継続的な支払いか
料金体系において、OfficeLTSCは購入時に初期費用を一括で支払うモデルです。
バージョンアップしない限り追加の費用は発生しませんが、サポート終了後に新しいバージョンへ移行する際は、再度ライセンスを購入する必要があります。
OfficeLTSC2024では前バージョンから価格が最大10%値上げされる予定で、初期投資は比較的高くなる傾向があります。
一方、Microsoft365は月額または年額で継続的に支払いが発生し、長期的に見ると総コストは高くなる可能性があります。
無料プランは存在しませんが、初期費用を抑えて導入できる点が特徴です。
どちらの価格体系が自社の財務状況に適しているかを慎重に検討することが求められます。
機能アップデート:セキュリティ更新のみか新機能も提供されるか
機能の更新ポリシーも両者の大きな違いです。
Office LTSCは、リリース時の機能が固定されており、原則として新機能が追加されるアップデートは提供されません。
提供される更新プログラムは、主にセキュリティの脆弱性を修正するものや、品質を維持するためのものに限られます。
これにより、ユーザーインターフェースや操作性が変わらず、安定した利用環境を維持できます。
対照的に、Microsoft 365は常に最新の機能が提供され、セキュリティ更新と同時に機能強化のアップデートが継続的に行われます。
安定性を重視する場合はLTSC、最新機能を活用したい場合はMicrosoft 365が適しています。
利用可能なアプリケーションとクラウドサービスの違い
Office LTSCとMicrosoft 365では、Word、Excel、Outlookといった基本的なデスクトップアプリケーションは共通して利用できます。
しかし、Microsoft 365にはSharePoint Online、Exchange Online、OneDrive for Businessといった強力なクラウドサービスが付随し、これらとのシームレスな連携が可能です。
例えば、複数人でのリアルタイム共同編集や、大容量のクラウドストレージの活用が挙げられます。
一方、Office LTSCにはこれらのクラウドサービスは含まれていません。
また、PublisherやAccessといったアプリケーションは、LTSCの一部のエディションでは提供されない場合があり、自社の業務で必須のアプリケーションが含まれているか事前に確認が必要です。
従来の永続ライセンス版Office(2021など)からの変更点
Office LTSC 2024は、Office 2021 LTSCやそれ以前のOffice 2019、Office 2016といった永続ライセンス版の後継製品です。
これまでのバージョンからいくつかの重要な変更が加えられており、特にサポートポリシーやアプリケーションの構成が異なります。
過去の永続版Officeを利用している企業が2021年版や最新の2024年版へ移行する際には、これらの変更点を正確に把握し、自社の運用に影響がないかを確認することが不可欠です。
サポート期間が5年間に短縮
Office LTSC 2024 のサポート期間は、製品リリースから5年間のメインストリームサポートのみ提供されます。
これは Office LTSC 2021 からの方針を引き継いでおり、かつての Office 2019 などで設定されていた延長サポートは提供されません。
サポート期間が終了すると、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなり、脆弱性などのリスクに晒されることになります。
このため、企業は5年というライフサイクルを前提とした導入計画と、サポート終了を見越した今後の移行計画を立てる必要があります。
実質的にサポート期間が短縮されたことで、より計画的な IT 資産管理が求められるようになりました。
Teamsアプリは含まれず別途ダウンロードが必要
Office LTSC 2024のインストーラーには、Microsoft Teamsのクライアントアプリケーションが含まれていません。
これは、以前のバージョンであるOffice LTSC 2021からの大きな変更点です。
Teamsは頻繁に機能がアップデートされるクラウドベースのサービスであり、機能が固定されるLTSCのコンセプトとは性質が異なるため、分離されました。
Office LTSC 2024を導入した環境でTeamsを利用する場合は、Microsoftの公式サイトから別途インストーラーをダウンロードし、個別にインストール作業を行う必要があります。
これにより、Office本体の導入とコミュニケーションツールの導入を分けて管理することが求められます。
最新版!Office LTSC 2024の概要
2024年後半にリリースが予定されているOfficeLTSC2024は、法人向け永続ライセンスの最新版です。
このバージョンは、インターネットに接続できない、あるいは機能の変更を好まない特定の環境向けに設計されています。
Microsoft365で先行して提供されてきた機能の一部が取り込まれており、生産性の向上が期待できます。
ここでは、最新のOfficeLTSC2024で追加される新機能や廃止される機能、そして導入前に確認が必須となるサポート期間やシステム要件について具体的に解説します。
Office LTSC 2024で追加された主な新機能
Office LTSC 2024には、Microsoft 365 Appsで提供されている機能の中から、安定性が確認された一部の機能が新たに追加されます。
例えば、Outlookにおいては、会議のスケジュール調整を効率化する新しい会議オプションや、検索精度が向上した機能が搭載される予定です。
Excelでは、複雑なデータ処理を簡略化する動的配列やXLOOKUP関数、より視覚的な表現を可能にする新しいグラフの種類などが追加されます。
これらの新機能は、オフライン環境でも日々の業務効率を高めることに貢献しますが、AIを活用したCopilotのようなクラウド連携を前提とする最新機能は含まれません。
Office LTSC 2024で廃止・変更された機能
Office LTSC 2024では、いくつかの機能が廃止または変更されます。
最も大きな変更点として、Windows版のOfficeスイートから簡易DTPソフトであるMicrosoft Publisherが完全に削除されます。
Publisherは今後サポートされなくなり、既存のファイルは他のアプリケーションで開ける形式に変換しておく必要があります。
また、Microsoft Teamsクライアントがインストーラーに含まれなくなり、必要に応じて別途インストールする方式に変更されました。
これらのアプリケーションを現在業務で利用している場合は、アンインストールされることによる影響を考慮し、代替ツールの検討や運用フローの見直しが求められます。
Office LTSC 2024のサポート期間とシステム要件
Office LTSC 2024のサポート期間は、製品のリリースから5年間です。
この期間中はセキュリティ更新が提供されますが、延長サポートはないため、期間終了後は後継製品への移行が必須となります。
システム要件については、Windows版はWindows 10またはWindows 11で動作し、32ビット版と64ビット版の両方が提供されます。
Mac版も同時にリリースされ、その時点での最新3バージョンのmacOSがサポート対象です。
導入を検討する際には、社内で使用しているPCのOSがこれらの要件を満たしているか、事前に必ず確認する必要があります。
特に古いOS環境で利用している場合は注意が必要です。
Office LTSCの導入が適している利用シーン
Office LTSCは、全ての法人にとって最適な選択肢とは限りません。
しかし、特定の業務環境やセキュリティ要件下では、サブスクリプション型のMicrosoft 365よりも大きなメリットを発揮します。
機能が固定化されている点や、オフラインでの利用が可能であるという特性を活かせるシーンが存在します。
ここでは、具体的にどのような状況でOffice LTSCの導入が適しているのか、代表的な利用シーンを挙げて解説します。
インターネット接続ができないオフライン環境の端末
Office LTSCが最も強みを発揮するのは、インターネットへの接続が物理的またはセキュリティポリシーによって制限されているオフライン環境です。
例えば、工場の生産ラインを制御する専用PC、外部ネットワークから完全に隔離された研究所の端末、あるいは船舶や遠隔地の施設など、安定したインターネット接続が確保できない場所での利用がこれに該当します。
Microsoft 365は定期的なライセンス認証のためにオンライン接続を必要としますが、Office LTSCはその必要がないため、完全に閉じたネットワーク内でも問題なく運用を続けることが可能です。
機能の変更を避けたい特定業務用の端末
Office LTSCは、一度導入すると機能が固定され、UIの変更や新機能の追加が行われないため、業務の安定性を最優先したい場合に適しています。
例えば、Officeアプリケーションのマクロやアドインを特定の業務プロセスに深く組み込んでいる場合、Microsoft 365のように頻繁なアップデートが行われると、互換性の問題が発生し業務が停止するリスクがあります。
また、操作マニュアルの頻繁な改訂や従業員への再トレーニングといったコストを避けたい場合にも、機能が変更されないLTSCは大きな利点となります。
こうした利用制限がある環境では、安定稼働が最優先されます。
Office LTSCの購入方法とライセンスプログラムについて
Office LTSCは法人向けのボリュームライセンス製品であり、個人向けのパッケージ版のように家電量販店やオンラインストアで直接購入することはできません。
導入を検討する場合、Microsoftの認定リセラーや販売店を通じて購入手続きを進める必要があります。
どのライセンスプログラムを選択するかによって、購入単位や価格、付帯する権利が異なるため、自社の規模や導入計画に合わせて販売店へ問い合わせ、最適なプログラムを提案してもらうのが一般的です。
ここでは、具体的な購入の流れとライセンスプログラムについて解説します。
Openライセンス終息に伴うCSPプログラムへの移行
従来、多くの中小企業で利用されてきたボリュームライセンスの購入方法である「Openライセンス」プログラムは、2022年1月をもって提供が終了しました。
これに伴い、OfficeLTSCのような永続ライセンスの主な購入経路は、「CSP(CloudSolutionProvider)」プログラムへと移行しています。
企業はCSPパートナーである販売店を通じて、必要な数の永続ライセンスを購入します。
また、Openライセンスで提供されていたアップグレード権を含むソフトウェアアシュアランス(SA)の扱いも変更されているため、CSPへの移行に際しては、ライセンスの管理方法や将来的なバージョンアップの計画について、販売店と詳細を確認することが重要です。
Office LTSC導入前に知っておきたい注意点
Office LTSC 2024を導入する際には、いくつかの技術的な注意点を事前に把握しておくことが重要です。
購入前の検討だけでなく、実際のインストールや展開、ライセンス認証のプロセスで問題が発生しないよう、計画的な準備が求められます。
特に、多数のPCへ展開する場合には、インストーラーのカスタマイズやライセンスキー(MAKなど)の管理、グループポリシーを用いた設定の統一など、特有の作業が必要になります。
ここでは、Office LTSC 2024を展開する上で見落としがちな注意点を解説します。
新機能の追加アップデートは提供されない
Office LTSCを導入する上で最も理解しておくべき点は、セキュリティ更新以外の新機能が追加されないことです。
導入時点の機能セットが、5年間のサポート期間を通じて維持されます。
これは安定性というメリットをもたらす一方で、Microsoft 365で次々とリリースされるAI機能や共同編集機能の強化といった、生産性向上に直結するイノベーションの恩恵を受けることができないという側面も持ちます。
将来的に業務プロセスが変化し、最新機能が必要になった場合でも、LTSCでは対応できません。
このため、導入対象の部署や業務が、本当に機能固定で問題ないかを慎重に見極める必要があります。
Microsoft 365のようなクラウド連携は利用できない
Office LTSCは、基本的にデスクトップで完結するアプリケーション群であり、Microsoft 365が提供するような高度なクラウドサービスとの連携機能は利用できません。
例えば、SharePoint OnlineやOneDrive上のファイルを複数人で同時にリアルタイム編集したり、Teamsとシームレスに連携して会議の議事録を作成したりといった、クラウドを前提とした働き方には対応しにくいです。
ファイルの保存場所としてクラウドストレージを指定することは可能ですが、アプリケーションとサービスが一体となった利便性は得られません。
テレワークや部門を越えたコラボレーションを重視する企業文化の場合、LTSCの機能では不十分となる可能性が高いです。
まとめ
Office LTSC 2024は、オフライン環境での利用や、機能の固定化による安定運用が求められる特定の業務シーンに特化した、法人向けの永続版ライセンスです。
初期費用のみで永続的な利用権を得られる一方、新機能の追加アップデートはなく、クラウドサービスとの連携機能も限定的です。
対照的に、Microsoft 365はサブスクリプション形式で継続的なコストが発生しますが、常に最新の機能を利用でき、豊富なクラウドサービスとの連携によって多様な働き方を支援します。
自社のセキュリティポリシー、予算計画、従業員の業務内容、そして将来の事業展開などを総合的に評価し、両製品の特性を正しく理解した上で、どちらが最適かを判断することが求められます。

Microsoft 365
クラウドでWord、Excel、PowerPointなどのMicrosoft Officeサービスなどが利用できるオールインワンサービス。
サブスクリプション型のため常に最新バージョンのOffice製品を使うことができます。