ビジネスにおいてメールは不可欠なコミュニケーションツールですが、ファイルの送受信には情報セキュリティ対策が重要です。特に「PPAP」と呼ばれるファイル共有方法は、セキュリティリスクや業務効率の低下が問題視されており、近年では多くの企業がPPAPに代わる安全な対策への移行を進めています。この記事では、PPAPが抱える問題点と、貴社の情報セキュリティを強化するための具体的な対策について詳しく解説します。
PPAPとは?
PPAPとは、メールでパスワード付きのZIPファイルを送り、その後に別のメールでパスワードを送信するというファイル共有方法です。この名称は「Password(P)付きファイルを送ります」、「Password(P)を送ります」、「暗号化(A)」、「Protocol(P)」の頭文字を取ったものとされています。過去には多くの企業でセキュリティ対策として広く採用されていましたが、現在では様々な問題が指摘され、その利用を疑問視する声が多く上がっています。日本政府もPPAPの危険性から廃止の方針を示しており、PPAPを採用する企業は減少傾向にあります。
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まだパス付zip送っていませんか?あの企業はもうやっている!「脱PPAP対策」
セキュリティ対策として暗号化したパスワード付きzipファイルをメールに添付し、その後解凍用パスワードを別メールで送信する手法「PPAP」のリスクについて解説します。
記事を読むPPAPに潜む問題点
PPAP方式には、セキュリティと業務効率の両面でいくつかの問題点があります。
セキュリティに関する懸念点・セキュリティリスク
PPAPの最大の懸念点は、情報漏洩のリスクを完全に排除できないことです。ファイルが添付された1通目のメールとパスワードが記載された2通目のメールは、多くの場合同じ通信経路をたどって送信されます。このため、もし通信経路が第三者によって傍受された場合、ファイルとパスワードの両方が同時に漏洩してしまう可能性があり、セキュリティ対策としての効果が薄れてしまいます。また、パスワード付きZIPファイルは、ウイルス対策ソフトによる自動スキャンが機能しない場合があり、マルウェア感染のリスクを高める可能性があります。脆弱な暗号化方式が使われている場合、パスワードが容易に解析されてしまう危険性も指摘されています。さらに、メールの誤送信が発生した場合、パスワード付きであっても意図しない相手に情報が渡ってしまうリスクも存在します。
業務効率の低下
PPAPは、送信側と受信側の両方にとって業務効率を低下させる要因となります。送信側は、ファイルをZIP形式で圧縮しパスワードを設定する手間や、ファイルとは別にパスワードを通知するメールを作成・送信する作業が発生します。受信側も、2通のメールを確認し、ZIPファイルをダウンロードしてパスワードを入力し解凍するという複数の手順を踏む必要があります。これらの手作業は、特に頻繁にファイルをやり取りする場合に大きな負担となり、時間的なロスにつながります。また、送信者がパスワードの送付を忘れた場合、受信者はファイルを開くことができず、業務が滞る可能性も考えられます。
政府や企業のPPAP廃止に向けた動き
PPAPが抱える問題点が広く認識されるにつれて、政府や企業の間でPPAPの廃止に向けた動きが加速しています。2020年11月には、当時のデジタル改革担当大臣が内閣府および内閣官房におけるPPAPの廃止方針を表明しました。これは、国民から寄せられたPPAPの廃止を求める意見がきっかけの一つとなったと言われています。この政府の動きに続き、文部科学省も2022年1月以降、PPAPを全面的に廃止し、代替手段への移行を進めています。こうした官公庁の動きを受けて、多くの大手企業もPPAPの廃止を表明し、脱PPAPの動きは民間企業にも広がっています。
PPAPに代わるファイル共有方法
PPAPのリスクを回避し、安全かつ効率的にファイルを共有するための対策として、いくつかの方法が考えられます。
ファイルとパスワードを別の方法で送る
PPAPの主な問題点である、ファイルとパスワードを同じメール経路で送るリスクを低減するために、それぞれ別の方法で送信することが有効な対策の一つです。例えば、パスワード付きZIPファイルはメールに添付して送信し、そのパスワードは電話やビジネスチャットツールなど、メール以外の通信手段で相手に伝えるといった方法が考えられます。これにより、メール経路が傍受されたとしても、パスワードが同時に漏洩するリスクを低く抑えることができます。ただし、パスワードを伝える別の手段が安全である必要があります。また、受信者にあらかじめパスワードを決めてもらい、送信者がそのパスワードでファイルを暗号化して送信する方法も、パスワードのやり取りを省略できるため盗聴リスク軽減に繋がります。
ファイル転送サービスを活用する
ファイル転送サービスは、大容量のファイルも安全に受け渡しできるPPAPに代わる有効な対策です。このサービスでは、送信者がファイルを専用のサイトにアップロードし、生成されたダウンロードリンクを相手に通知します。受信者はそのリンクからファイルをダウンロードするため、メールに直接ファイルを添付する必要がありません。法人向けのファイル転送サービスには、ファイルの暗号化や、ダウンロード時のパスワード設定、利用ログの管理など、セキュリティ機能を備えたものが多くあります。無料のサービスもありますが、ビジネスで機密情報を扱う場合は、セキュリティ対策がより強化された有料版や法人向けサービスを検討することが推奨されます。
クラウドストレージを利用する
クラウドストレージは、インターネット上にファイルを保管し、共有できるサービスであり、PPAPの代替手段として有効な対策です。ファイルをクラウドストレージにアップロードし、共有用のURLをメールなどで相手に通知することで、メールに直接ファイルを添付せずに済みます。多くのビジネス向けクラウドストレージサービスは、データの暗号化や厳格なアクセス制御、ログ管理などのセキュリティ機能を備えており、PPAPと比較して高い安全性を確保できます。また、インターネット環境があれば場所を問わずファイルにアクセスできるため、テレワークなど多様な働き方にも対応できます。
チャットツールの活用
ビジネスチャットツールも、PPAPに代わるファイル共有の対策として活用できます。多くのチャットツールにはファイル共有機能があり、特定の相手やグループ内でファイルを安全に共有できます。メールのように誤った相手に添付ファイルを送ってしまうリスクを減らすことができ、ファイル送信のログも残りやすいため、トレーサビリティの確保にも役立ちます。ただし、利用するチャットツールのセキュリティレベルを確認し、必要に応じて情報漏洩対策を講じることが重要です。
まとめ
PPAPはかつて広く利用されたファイル共有方法ですが、情報漏洩リスクや業務効率の低下といった多くの問題が指摘されています。政府や企業の間で脱PPAPの動きが進んでおり、貴社においても情報セキュリティ対策を見直し、PPAPに代わる安全かつ効率的なファイル共有方法へ移行することが重要です。
ビジネス向けクラウドストレージサービスを活用してPPAP問題を解決!
PPAPの問題点を解決し、安全にファイルデータをやり取りする方法として、ビジネス向けクラウドストレージサービスの活用が有効です。ファイルをメールに直接添付する代わりに、まずクラウドストレージにアップロードし、そのダウンロードURLのみを相手に通知することで、ファイルとパスワードを同じ経路で送るリスクを回避できます。多くのビジネス向けクラウドストレージサービスは、強力なセキュリティ機能を備えており、PPAP方式よりもはるかに安全なファイル共有を実現できます。例えば、アクセス権限を詳細に設定したり、誰がいつどのファイルを参照・ダウンロードしたかの履歴を確認したりすることが可能です。さらに、クラウドストレージに保管されるファイルを自動的にウイルスチェックする機能があれば、パスワード付きZIPファイルを悪用したサイバー攻撃のリスクも軽減できます。メールを介さずにクラウドストレージ上で直接ファイルを共有する運用ルールを設ければ、メールの盗聴や誤送信による情報漏洩リスクをさらに低減することも可能です。