電子契約とはどんなもの? 初心者向けにわかりやすく解説!

電子契約に不慣れな初心者に向けて、書面契約と電子契約がどのように違うのかを示し、電子契約とはいかなるものかをわかりやすく解説します。また、電子契約に欠かせない電子署名、タイムスタンプ、電子証明書を押さえたうえで、電子契約を結ぶ流れやデメリット、導入時の注意点についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。


 

目次


電子契約とは

電子契約とはソフトウェアを用いて作成した電子文書に、契約の当事者であることを示す電子署名を入れることにより、オンライン上で交わされる契約を指します。

電子契約の主なメリットは、時間やコストの削減と、保管業務の大幅な効率化です。電子契約では、契約書類を相手に郵送するための封筒代や郵便代、契約書に貼る印紙代が不要で、それらに関連する作業も省けます。また、オンライン上で契約が完結するのでリモートワークでも十分対応でき、さらにはコンピュータでの契約書類の一元管理が可能です。


書面契約とどこが違う?

まず挙げられるのは、形式の違いです。書面契約では紙を、電子契約では電子データ(PDFファイル)を用います。
次に、証拠力となるものの違いです。ここでの証拠力とは、契約が当事者の意思に基づいて行われたことを示す効力を指し、判断要素には、押印、本人性の担保(なりすましの防止)、完全性の担保(改ざんの防止)の3つがあります。書面契約では本人が手書きした氏名、印鑑証明書、契印・割印が証拠力となり、電子契約では電子署名、電子証明書、タイムスタンプがそれぞれ同様の役割を果たします。

さらには、送付や保管といった事務処理の違いです。書面契約では郵送するか直接持参するので、時間とお金がかかりますが、電子契約では電子メールの送信で事足り、スピーディーかつ無駄がありません。書面契約では必須だった契約書への印紙の貼付も、電子契約では不要です。 また、契約書類の保管にあたっては、書面契約の場合、ファイリングして書棚に収めたり、書類を探したりする作業が必要となるほか、一定の保管場所を確保しなければなりません。一方、電子契約ではデータをサーバーに保管すればよいので、それほど場所を取らずにすみ、必要な書類も検索で簡単に探せます。


電子契約に法的効力はある?

基本的に契約は、口約束だけでも成立します。しかし、何らかの契約トラブルが発生した場合には、契約の成立を証明するために、法的効力のある文書を提示しなければなりません。
これに関連して、民事訴訟法第228条第4項には「署名や押印があれば本人が作成した文書だと推定される」旨が、電子署名法第3条には「電子署名があれば本人が作成した文書だと推定される」旨が、それぞれ規定されています。そのため、書面契約では適切な署名や押印があれば、電子契約では適切な電子署名が入っていれば、文書に法的効力があると認定されるはずです。

したがって、電子契約が法的に認められていない一部の契約を除き、電子契約には書面契約と同等の法的効力があります。ただし、電子文書が法的に有効だと認められるには、電子署名に加えて、改ざんがないことを証明するタイムスタンプが必要です。なお、電子署名やタイムスタンプについては後述します。


電子契約に欠かせない3つの仕組み

電子契約において本人が作成した本物の契約書であることを証明し、文書の信頼性を高めるのに欠かせないのが、電子署名、電子証明書、タイムスタンプという3つの仕組みです。以降にこれらの仕組みを紹介します。


電子署名

紙の契約書で不可欠とされる手書きのサインや印鑑に相当するものが、電子署名です。電子署名は本人にしかできないものであり、文書の作成者を相手に知らせるだけでなく、文書が改ざんされたときに検知するという重要な役割を担っています。電子署名が入った電子文書は、本人が作成した原本であり、信用できる文書として取り扱うことが可能です。


電子証明書

書面契約で書類に押された印鑑が、本人によって役所に登録された実印であることを証明する印鑑証明書に相当するものが電子証明書です。電子証明書は認証局と呼ばれる信頼性の高い第三者機関が発行します。電子契約の際に電子証明書があれば、電子署名が間違いなく本人のものであると証明でき、電子契約書に法的効力を持たせられます。


タイムスタンプ

任意の電子文書について、存在証明と非改ざん証明を行うのがタイムスタンプの役割です。電子文書にタイムスタンプを押すことで、タイムスタンプの日時よりも前に文書が存在し、押した日時以降に変更がないことを確認できます。信頼性を担保するため、タイムスタンプ発行は時刻認証局という第三者機関が担っています。

ただ、タイムスタンプを発行する際に、認証局の担当者が文書の内容を閲覧できてしまう状態は望ましくありません。そこで、当事者ではない人が電子文書を見ても何が書いてあるかわからないように、元の文書データをハッシュ関数でハッシュ値に変換処理することで暗号化します。このハッシュ値に時刻情報を加えたものが、タイムスタンプです。

さて、タイムスタンプの話題で注目すべきなのは、2022年1月に改正電子帳簿保存法が施行され、タイムスタンプに関する要件が緩和されたことです。この法改正により、たとえば、国税関係書類をスキャナ保存する際のタイムスタンプ付与期間が、最長で約2か月とおおむね7営業日以内に延長され、記録した文書について訂正や削除を行った場合に、一定の要件を満たせばタイムスタンプが不要になりました。


実際にどう行われる? 電子契約が結ばれるまでの流れ

契約自体はメールやビジネスチャットでも結べますが、それでは電子契約の安全性を確保するのに欠かせない電子署名・電子証明書・タイムスタンプが使えません。トラブルが起きた場合に備えて、電子契約を安全に導入したいのであれば、電子契約システムを利用するのが無難です。 ここでは電子契約システムを利用した場合に、電子契約が結ばれるまでの一般的な流れを解説します。なお、導入している電子契約システムによっては、以下の説明と流れが異なる場合があるため、ご注意ください


1. 契約書の準備と相手方への送信

まず、契約書を作成し、不備がないかチェックした後、契約の相手方に書類を送付します。電子契約システムには、契約書用のテンプレートが用意されていることが多いため、導入しているシステムの手順に従って書類を準備し、送信しましょう。
契約書を相手方へ送る前には、見落としがないかを十分にチェックしなければなりません。作成した契約書に潜む重大なリスクを見落として契約を結ぶと、予期せぬトラブルに発展して大きな損害を被ってしまいます。こうしたリスクには「リーガルフォース」というAI契約審査プラットフォームが有効です。法改正に対応したAIが契約書の内容を判断して、文書に潜むリスクを検出してくれるので安心です。


2. 契約内容の確認と電子署名・タイムスタンプの付与

契約書を受け取った側が契約内容を確認し、入力項目があれば対応します。書類の内容に同意する場合には契約が締結され、書面に電子署名やタイムスタンプなどが付与されます。なお、電子署名やタイムスタンプなどが付与されるタイミングは、電子契約システムによって異なる場合があるので、システムのマニュアルをご確認ください。


3. 電子契約データの保管

最後に、電子契約データを適切に保管しなければなりません。紙の契約書と同様に、電子契約データにも7年間の保存義務が課せられます。電子契約データは作成され、受領された国内の納税地で保管しなければならず、画面表示や印刷で文字がしっかり判読できる見読性の確保などが必要です。
電子契約データの保管にはファイリング作業が必要なく、ペーパーレスなので書類の保管場所を取らないなど、デジタルならではのメリットがあります。


電子契約にデメリットや注意点はある?


一部契約は書面での締結が義務付けられている

電子契約で注意すべき点は、法的に電子契約では認められない契約が存在することです。公正証書が必要となる契約など一部の契約は、書面での契約が義務付けられています。書面契約が必要となる主な契約としては、事業用定期借地権設定契約、企業担保権の設定または変更を目的とする契約、任意後見契約が挙げられます。

なお、現時点では特定商取引(訪問販売等)の契約等書面も、書面での契約が義務付けられていますが、2023年6月に改正法が施行されて電子契約が認められる予定です。


導入には取引先の理解や協力が必要

電子契約の導入には取引先の理解や協力が欠かせません。電子契約システムを導入していないなどの理由で、相手方が電子契約を拒否してきた場合には、電子契約は利用不可能です。取引先に電子契約を持ちかける場合には、相手を説得したり、未経験の相手なら電子契約のやり方を教えたりといった努力が必要になります。

電子契約にはコストや管理の手間の軽減といったメリットがある一方で、紙の書面による契約とは異なる独自の注意点もあります。両者の違いを押さえたうえで、導入しましょう。


まとめ

法的効力を持つ電子契約の安全性は電子署名電子証明書タイムスタンプという仕組みが支えています。電子契約を安全に進めるためには、以上の仕組みが利用できる電子契約システムの活用が効果的です。なかでも「クラウドサイン」は、高いセキュリティレベルが評価され、金融機関や官公庁でも使われているおすすめの電子契約サービスです。

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