忘年会・新年会の時期は、飲酒運転のリスクが高まります。車を使用する会社では、こうしたリスクを防ぐためにアルコールチェックの徹底が欠かせません。本記事では、飲酒運転がなぜ危険なのか、アルコールチェックはなぜ必要なのかといった基本から、会社が取るべき安全運転対策までをわかりやすく解説します。
気の緩みが招く深刻な「飲酒運転」のリスク
コロナ禍で控えられていた忘年会・新年会ですが、東京商工リサーチが企業向けに実施したアンケート調査によると、2025年から2026年にかけて忘年会や新年会を開催する企業は57.8%と過半数に達し、コロナ禍前の水準へ回復傾向にあります。こうした飲酒機会の増加に伴い、あらためて意識したいのが飲酒運転のリスクです。
警視庁公認交通安全情報によると、飲酒による死亡事故の約3割が早朝の4時から8時に集中しています。これは、夜に飲酒したアルコールが完全に分解されないまま、翌朝に運転してしまうケースが多いと考えられます。一般的に、アルコールが体内で分解されるまでには約8時間かかるとされており、「一晩寝たから大丈夫」という判断は非常に危険です。
特に忘年会・新年会シーズンは飲酒運転事故が多発しやすく、本人の意識がしっかりしていても、呼気中アルコール濃度が法定基準を超えていれば違反となり、重大な事故につながる恐れがあります。
参照元:東京商工リサーチ|2025年「忘・新年会に関するアンケート」調査
参照元:警視庁公認交通安全情報|数字で見るTOKYO SAFETY ACTION
会社が「アルコールチェック」を徹底すべき理由
会社がアルコールチェックを徹底する理由は、単なる法令遵守にとどまりません。従業員による飲酒運転は、会社経営そのものに深刻な影響を及ぼす可能性があります。ここでは、アルコールチェックを徹底すべき主な理由を解説します。
法的義務化と罰則の強化
2022年の道路交通法施行規則の改正により、対象となる会社には安全運転管理者の選任と運転前後における目視等による運転者の状態の確認が、そして2023年には検知器による酒気帯び確認(アルコールチェック)の実施が義務付けられました。
この改正で罰則も強化され、安全運転管理者を選任しなかった場合の罰則は、従来の5万円以下から50万円以下へと大幅に引き上げられています。また、アルコールチェックを実施しないなどの違反行為について公安委員会の是正命令に従わなかった場合は、50万円以下の罰金が科されます。
さらに従業員が酒気帯び運転を行った場合には、運転者本人だけでなく、車両を提供した会社や管理責任者も刑事罰の対象となります。なお、酒気帯び運転と判断される基準は、呼気中アルコール濃度0.15mg/L以上です。0.15mg/L以上0.25mg/L未満の場合であっても、運転者には3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、さらに違反点数13点といった重い処罰が科されます。
このように飲酒運転に対する罰則は年々強化されており、法令違反によるリスクを回避し、会社と従業員を守るためにも、アルコールチェックの徹底が求められます。
参照元:警察庁|安全運転管理者の業務の拡充等
参照元:e-gov法令検索|道路交通法
参照元:警察庁|飲酒運転の罰則等
損害賠償請求による経済的損失の回避
飲酒運転による事故が発生すると、運転者だけでなく、会社も被害者への損害賠償や慰謝料の支払いを求められる可能性があります。それに加えて、車両の修理費用や訴訟対応のための費用、再発防止のための費用、事故対応による業務停滞など、多方面で大きな負担が発生します。このような莫大な経済的損失は、特に中小企業にとっては会社の存続を脅かすほどの致命的な事態を招きかねません。
アルコールチェックを徹底することは、こうした経済的リスクを未然に防ぐことにつながります。
会社の社会的信用とブランドイメージの保護
従業員による飲酒運転事故がニュースやSNSで報道されると、会社のブランドイメージは大きく損なわれ、社会的信用を一瞬にして失う恐れがあります。一度低下した信頼を回復するのは容易ではなく、顧客や取引先との契約打ち切りにつながる可能性も高まります。また、従業員の士気低下や採用活動への悪影響といった、社内外への影響も避けられません。特に地域密着型のビジネスを展開する中小企業にとって、地域社会からの信頼は何より大切な財産です。長年築いてきた会社の社会的信用とブランドイメージを守るためにも、アルコールチェックの徹底が欠かせません。
アルコールチェックが義務化された背景:飲酒事故の事例
アルコールチェックの義務化の大きなきっかけとなったのは、2021年6月に千葉県八街市で発生した飲酒運転事故です。この事故では、飲酒運転のトラックが下校中の児童の列に突っ込み、小学生5人が死傷(2人死亡、3人負傷)するという痛ましい結果となり、社会に大きな衝撃を与えました。
この事故を受けて、それまで義務化されていなかった白ナンバー車両を使用する会社に対しても、安全運転管理者の業務として運転前後のアルコールチェックの実施とその結果の記録・保存が義務付けられました。
さらに、この事故を教訓に、飲酒運転は極めて悪質で危険な犯罪であり、会社による徹底した安全運転管理が必要であると、社会から強く求められるようになりました。
アルコールチェック義務化の対象となる会社
アルコールチェックの義務化は、全ての会社が対象というわけではありません。安全運転管理者の選任が必要な会社が対象です。具体的には、以下の条件に該当する会社(事業所)が対象となります。
アルコールチェックの義務化の対象
- 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上使用
- そのほかの自動車を5台以上使用 ※大型自動二輪車または普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算
運送業に限らず、営業車や社用車を複数台使用している会社も対象となるため、「うちは関係ない」と思い込まず、該当の有無を確認することが大切です。
参照元:警察庁|安全運転管理者制度の概要
参照元:e-gov法令検索|道路交通法施行規則第9条の8
会社が取るべき安全運転管理の「3つの柱」
飲酒運転に対する社会の目が一層厳しくなっている昨今、会社が取り組むべき安全運転管理は「安全運転管理者の選任」「アルコールチェックの実施と記録の徹底」「社内規定の整備と教育の徹底」の3つです。
安全運転管理者の選任
一定数以上の車両を保有する会社は、道路交通法に基づき、安全運転管理者の選任が義務付けられています。選任された管理者は、運転者の状況把握をはじめ、運行計画の作成、交通安全教育の実施などを行います。このように安全運転管理者を選任することは、交通事故を未然に防ぎ、人命や会社の資産を守ることにつながります。
なお、安全運転管理者の選任や解任を行った場合は、15日以内に会社管轄の警察署を通じて公安委員会へ届け出る必要があり、これを怠ると罰則の対象となります。
参照元:警察庁|安全運転管理者制度の概要
アルコールチェックの実施と記録の徹底
安全運転管理者は、運転業務の開始前及び終了後に、運転者の酒気帯びの有無を、アルコール検知器(アルコールチェッカー)を用いて確認することが義務付けられています。あわせて、確認結果についても1年間保存することが法律で定められています。
アルコールチェックの実施と記録は、飲酒運転の抑止に役立つだけでなく、万が一事故やトラブルが発生した際に、会社として適切な管理を行っていたことを示す重要な証拠となります。そのため、アルコールチェックの実施漏れや記録に記載不備が起きないよう、徹底したルール化や管理体制を整えることが大切です。
参照元:e-gov法令検索|道路交通法施行規則第9条の10の6号、7号
飲酒運転を許さない社内規定の整備と教育の徹底
飲酒運転を根絶するためには、「飲酒運転は犯罪である」という認識を全従業員に浸透させることが不可欠です。特に、飲酒運転がもたらす危険性や、アルコールチェックの必要性について、社内研修や外部セミナーなどを通じて理解を深めてもらうことが重要です。
それと同時に、飲酒に関する社内規定を明文化し、全従業員に周知徹底する必要があります。飲酒運転が発覚した場合の懲戒処分についてもあらかじめ定めておくことで、抑止力を高め、飲酒運転を許さない企業文化の醸成につながります。
アルコールチェック管理サービスなら「スリーゼロ」
アルコールチェックの結果を紙で記録・管理する場合、記録漏れや改ざん、紛失のリスクがあるほか、保存や管理に手間がかかります。こうした課題を解消できるアルコールチェック管理サービスとして注目されているのが「スリーゼロ 」です。
スリーゼロは、運転者が行ったアルコールチェックの結果を、スマートフォンアプリを通じてクラウド上に送信・保存できるサービスです。120機種以上のアルコール検知器に対応しているため、既存の機器をそのまま活用しやすく、導入コストを抑えられます。
また、1年間の保存が義務付けられている検査記録をデータで一元管理でき、必要なときに特定の記録を検索・抽出して簡単に出力することが可能です。これにより、安全運転管理者の業務負担を大幅に軽減できます。
まとめ
忘年会や新年会が増える今、会社にとって飲酒運転のリスクは深刻です。従業員の飲酒運転は、法的責任に加え、経済的損失や社会的信用の低下を招く恐れがあります。そのため会社は、安全運転管理者の選任やアルコールチェックの徹底、社内ルールの整備と従業員教育を行い、事故を防ぐ体制を整えることが大切です。

.png)
