2025年のITトレンド総まとめ|中小企業情シスが押さえるべきポイント

多様なIT技術やクラウドシステムの普及により、企業はIT環境の変化への対応が求められています。事業の成長に大きな影響をもたらすため、情シス(情報システム部門)は最新のトレンドを必ず押さえておきましょう。本記事では、2025年のITトレンドと、情シスが知っておくべき戦略的アプローチを紹介します。

目次

なぜ今、ITトレンドのキャッチアップが重要なのか?

昨今、生成AI(人工知能)やSaaS、IoT、ゼロトラストセキュリティなど、新技術の革新スピードが加速しており、企業の成長戦略にDX(デジタルトランスフォーメーション)が直結する時代になり、ITへのコスト投下は「投資」として位置付けられています。そのため、情シスの意思決定は事業の成長に大きく影響します。

また、人手不足の深刻化により、IT技術による省人化・効率化の期待が上がっている現状もあります。こうした背景から、ITトレンドの把握は情シスにとって不可欠です。

情シスが押さえるべきITトレンド5選

企業の成長に直結するDXを支えるため、情シスは常に新しいITトレンドに注目する必要があります。そこでこの章では情シスが最低限押さえておきたいITトレンド5つを紹介します。


生成AIの「実務」への本格活用

2025年のITトレンドの中でも、生成AIの実務活用は最も重要なテーマです。生成AIは、文章や資料の作成、データの整理・分析などを支援する技術であり、日常業務に取り入れることで、業務効率化や判断業務の負担軽減につながります。


業務効率化

ドキュメントやレポートの作成、議事録の要約、顧客対応(チャットボット)、SNS投稿や宣伝用コンテンツの作成、リサーチやリストアップといった業務は、生成AIが得意とする分野です。Microsoft 365のCopilotGoogle WorkspaceのGeminiなど、業務ツールと連携した生成AIも身近になっており、業務効率化を目的に活用するケースが増えています。ただし、取り扱う情報の内容によっては、利用方法や範囲を整理した運用が求められます。


競争力強化

生成AIによる市場予測や顧客データ分析により、パーソナライズされたデータの抽出が可能になります。より的確なデータに基づいた商品・サービス企画や事業戦略の決定が可能になるため、競合他社と競える施策を展開できます。

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SaaSを組み合わせた「モダンデータスタック」の構築

モダンデータスタックの構築は、対応を検討したいITトレンドのひとつです。モダンデータスタックとは、企業がデータ運用や管理を効率化するために、複数のサービスを組み合わせて構築するデータ基盤を指します。その中心となるのが、「SaaS」と呼ばれるクラウド上のソフトウェア・サービスです。

SaaSは「Software as a Service」の略称で、インターネット経由で利用できる点が特徴です。自社でサーバーやソフトウェアを保有・管理する必要がなく、必要に応じて機能や利用規模を調整できます。LINE WORKS Zoom などの業務サービスも、SaaSの代表例です。

こうしたSaaSを連携させて構築するデータ基盤は、従来のオンプレミス環境と比べて、柔軟性・拡張性が高く、メンテナンスもしやすい傾向があります。さらに、AIと組み合わせることで、より高度なデータ活用基盤を整えることも可能です。


ローコード・ノーコード開発による「現場主導DX」の加速

業務アプリケーションを、視覚的な操作を中心に開発できるローコード・ノーコード(LCNC)ツールが普及しています。ローコードツールは、比較的少ないコーディングでアプリケーションを開発できる点が特徴です。一方、ノーコードツールは、専門的なプログラミング知識がなくても利用できますkintoneなどに代表されるツールは、現場の業務に合わせたアプリケーションを比較的容易に作成できる点で注目されています。

こうしたツールを活用することで、現場部門主体での業務改善やDX推進が容易になります。その結果、情シスは開発作業そのものに注力するのではなく、ツール利用のガバナンス整備や利用部門への教育・サポートに注力できるようになります。


サイバーセキュリティの高度化と「ゼロトラスト」への移行

IT技術の進化に伴い、サイバー攻撃の巧妙化や増加が懸念されています。そのため、従来の「社内ネットワークは安全」という境界防御型のセキュリティから脱却し、「何も信用しない」という考えに基づくゼロトラストセキュリティへの移行が求められます。ネットワークの内外を問わず、常にアクセスを検証する仕組みが必要であり、具体的にはユーザー権限の最小化や多要素認証の導入などが挙げられます。

製造業などでは、ITシステムだけでなく、設備やプラントなどの制御システムであるOT(Operational Technology)領域のセキュリティも考慮する必要があります。ITシステムは「情報漏えい防止」を最優先に設計されますが、OTシステムは「稼働を止められない」ことが最優先です。このため、IT領域だけの対策ではOTの安全性を十分に確保できず、OT領域向けの独自のセキュリティ施策も欠かせません。

DXの進展により、スマートビルやスマートファクトリーなど、OTとIT技術を組み合わせた活用事例も増えています。その際は、ITとOT それぞれの特性を理解し、適切な権限管理・認証・運用ルールの整備を組み合わせることが重要です。


デジタル・サステナビリティに向けた「グリーンIT」への対応

IT領域でも環境負荷低減、すなわち「サステナビリティ」への意識が高まっています。IT領域でのサステナビリティの取り組みは「グリーンIT」と呼ばれています。具体的には、消費電力の高いオンプレミス環境を見直し、省エネ性能に優れたクラウドサービスへ移行することや、老朽化したIT機器を計画的に更新することなどが挙げられます。企業の社会的責任(CSR)の観点からも、環境への配慮を示す取り組みとして意識しておきたいITトレンドです。

ITトレンドに乗るために、今から始めたい戦略的アプローチ

ITトレンドを積極的に取り入れ、企業のDXを進めるために実施しておきたいアプローチが3つあります。

現行システムの棚卸しとITコストの最適化

IT技術の導入・DXの推進時には、まず企業の「課題」や「目標」を抽出することは外せません。課題や目的が明確化したら、その解決・達成に向けて、既存のレガシーシステムが適切に機能しているかを検証し、維持コストを洗い出しましょう。また必要に応じて、クラウドシステムへの移行について計画を策定することも大切です。すでにSaaSなどのITツールを利用している企業は、現行使われていないツールやライセンスの解約を行い、コストを最適化することも検討しましょう。


IT導入のパートナー選定

せっかく導入してもきちんと運用できなければ、意味がありません。そのため、ITやデジタルに関する専門的な知見・経験のある人材の確保も必要なプロセスです。企業によって適切な方法は異なりますが、外部パートナーのサポートを受けるのもひとつの手段です。また、外部パートナーからツール・サービスを一括導入した場合、対応窓口を一本化できるメリットがあります。


IT導入を後押しする補助金制度の活用

ITツール導入時は、IT導入補助金を活用できます。IT導入補助金は、DX推進のためのIT投資を後押しする代表的な制度です。補助金の申請には「事業計画」を作成し、審査に通る必要があります。そのため、単に資金を得るためではなく、経営計画を見直す機会にもなります。

まとめ

ITテクノロジーの急速な進化を背景に、事業の成長を目指す上でITトレンドへの対応は欠かせません。生成AIやモダンデータスタック、ローコード・ノーコードツール、ゼロトラストセキュリティ、グリーンITなどの代表的なトレンドを押さえ、自社の課題や目的に応じて段階的に取り入れていきましょう。

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