デジタルツール反対の声とどう向き合う?DX抵抗勢力対策マニュアル

政府のDX推進の動きを受け、最新のデジタルツールの導入に取り組む企業が増加傾向にあります。さまざまなメリットがあるツールの導入ですが、従業員から反対の声が上がることも珍しくありません。この記事ではデジタルツール導入の担当者に向け、導入を成功させる方法について解説します。

目次

なぜデジタルツールの導入は反対されるのか?

業務の効率化だけではなく、事業の拡大や販路の開拓など、さまざまなメリットもあるデジタルツールの導入ですが、その変化に反対の声が上がることも珍しくありません。ツールの導入に反対する声が上がる原因は、主に下記の3つです。

・ツールを使うメリットが分からないから
・最新のツールについていけるか不安だから
・ツール導入にかかる時間を確保できないから

それぞれの不安について、以下に解説します。


ツールを使うメリットが分からないから

デジタルツール導入の反対の声が上がる原因のひとつが、導入するメリットが理解できないことです。現状で業務が差し障りなく稼働していると、わざわざ新しいツールを導入するメリットは理解しにくくなります。

しかし、2018(平成30)年に経済産業省が公開した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」でも触れているように、事業部門ごとに構築され横断的に機能しないシステムや、複雑化・ブラックボックス化したシステムの維持費が経営を圧迫することが懸念されています。また、前時代的なシステムを運用している場合は、メンテナンスを担う人材の世代交代が困難なケースも少なくありません。

業務の効率化であれば現場の従業員もメリットを理解しやすいですが、経営や企業全体の将来を考えた上でのデジタルツールの導入となると、全ての従業員が賛同できるわけではないので、反対の声が上がりやすくなります


最新のツールについていけるか不安だから

新しいデジタルツールはタッチパネル式だったり、システムが複雑に連動していたりするなど、アナログな業務や既存ツールの操作方法とは異なることも多いです。直感的に扱えるようになるには時間と労力が必要です。その上、努力してもついていけないかもしれないという不安から導入に反対するケースもあります。

新しいことや課題に前向きに挑戦できる従業員ばかりではありません。変化や挑戦に消極的な姿勢だったり、年を重ねるにつれ新しいツールに不慣れになったりする従業員もいます。また、最新ツールの導入についていけない場合に、自身の立場も心配になります。このような従業員がいると、新しいデジタルツールの導入に懐疑的な声が上がりがちです。


ツール導入にかかる時間を確保できないから

ツール導入の流れは、少数の従業員が先行してツールの使い方をマスターし、ほかの従業員にレクチャーするか、研修やプログラムを実施して従業員全員で足並みをそろえて使い方を習得する2つのパターンが考えられます。業務に差し障りなくツールを切り替えるには、どちらかのパターンで学習に充てる時間を確保する必要があります。また、学習は通常の業務をこなしながら行わなければなりません。

忙しい職場ではこの学習時間の確保が難しく、最新のデジタルツールの導入に反対するケースがあります

デジタルツール反対の声と向き合う方法

デジタルツール導入に反対する声に向き合い、DX(デジタルトランスフォーメーション)を円滑に進めるためには下記のポイントを押さえることが重要です。

それぞれのポイントについて、以下に解説します。


ツール導入に関する説明会を開く

不満や不安を抱えながら実行するのと、納得してから実行するのでは、学習や成長のスピードが異なります。後者の方が学習や成長のスピードは向上するため、急にデジタルツールの導入の決定を通知するのではなく、 説明会や会議を通じてツール導入の周知と理解を得て、不満や不安を解消することが重要です

説明会や会議で伝える内容には、導入のメリットと必要性を盛り込みましょう。ツールによる業務の効率化も魅力的なメリットですが、情報共有の質とスピードの向上や残業時間の短縮など、業務のクオリティーや労働環境の改善につながるメリットも説明に加えましょう。

また、少子高齢化による人材不足への対策や、既存システムの維持費が経営を圧迫する問題にも触れ、新しいデジタルツールの導入の必要性を伝えることも大切です。デジタルツールを販売するベンダーがツールの使い方やメリットなどをまとめたサポートサイトを公開している場合もあります。導入するツールを検討する際に見つけた有用なサポートサイトを、説明会や会議に活用するのも手段のひとつです。


役員・決定権のある管理職にツール導入を宣言してもらう

業務に当たる上で有用であり、経営においても必要不可欠であることを説明しても反対の声が上がるケースがあります。このような場合は、経営陣や決定権のある管理職に デジタルツールの導入を宣言してもらい、反対派に有無を言わせないのも選択肢のひとつです

前出の反対の声が上がる3つの原因は、導入を推進する側の対応で解決できます。説明会や会議でメリットや必要性を伝えたり、ツールについて効率的に学べるカリキュラムを用意したりすれば反対の声を抑えられます。学習時間の確保についても、現場の意見を取り入れながら計画を立てることで問題解決は難しくありません。

しかし、身勝手な理由で反対の声を上げる人も少なからずいるため、有無を言わせない導入宣言が有効なケースもあります。行動経済学や心理的概念で知られる「現状維持バイアス」は、変化を拒み、現状を維持しようとする人間の心理を指します。現状の業務は成り立っていることから、どんなに筋の通った説明をされても新しいツールの導入を受け入れられない心理状態です。

また、体制が変われば立場も変わることがあるため、ツール導入後の自身の立場が心配だったり、単に新しいことに取り組むのが面倒だったりする人もいます。このような理由で反対する人がいる場合は、経営陣や決定権のある管理職にツールの導入を宣言してもらいましょう。


ツールの使い方を分かりやすくまとめる

通常の業務と並行してツールの使い方を学習するため、マニュアルやカリキュラムは効率面と分かりやすさに重点を置くことが大切です。マニュアルを作成する際は、下記の3つのポイントを押さえましょう。

マニュアル作成のポイント

  • 要点が明確
  • マニュアルの構成がシンプル
  • 画像や動画の活用

マニュアルの情報量が膨大になると求める情報を探すだけでも手間がかかり、効率的な学習ができません。要点が明確でシンプルな構成で適切な情報量でまとめられたマニュアルが、効率的な学習には不可欠です。また、文字だけのマニュアルでは伝えられる情報が限られているので、画像や動画もマニュアルに取り入れましょう。

分かりやすいマニュアルは学習の際に有用なだけではなく、ツールを使い始めて疑問に感じたり、操作方法に迷ったりした場合にも役立ちます。マニュアルに載っていない疑問が生じることも想定し、ツール導入の担当者は問い合わせ先についても把握しておきましょう。


ツールに関する問い合わせには素早く回答する

どんなに分かりやすいマニュアルを用意しても、全ての従業員が一律に理解できるわけではありません。そのため、ツールの使い方に関して悩む場合に備えて、相談や問い合わせができる体制を整えておきましょう

また、問い合わせには素早く回答することが重要です。担当者に問い合わせても返事が遅かったり、回答を待てずに自己流で対応して失敗したりすれば、従業員はやる気を失う恐れがあります。問い合わせて分からないことを乗り越えようという前向きな姿勢に水を差しかねません。問い合わせにはできる限り素早く対応し、自身の業務上、難しい場合は問い合わせの担当を置くことも検討しましょう。回答を受けた従業員はモチベーションを保ちつつスムーズに次の行動に移せるので、大きなメリットが得られます。

ツール導入には事前準備が必要

業務効率化などに効果的なデジタルツールの導入ですが、従業員から反対の声が上がることもあります。しかし、説明会やマニュアル作成などの事前準備を徹底することで、導入を成功に導くことは可能です。反対の声への対策を徹底し、デジタル化を進めてみてください。

TOPへ