労務の年間スケジュールは? 期間ごとの仕事内容と効率的に進めるポイント

4月は新入社員の対応、7月はボーナスの支給というように、労務では時期ごとに異なる業務が発生します。そのため、労務担当者は普段の仕事をこなしつつ、一年の流れからどの時期に何の業務が必要なのかを意識して準備を進めることが重要です。そこで本記事では、労務の年間スケジュールや、そこで生じる主な仕事内容を解説します。

 

目次

労務の年間スケジュールは? 期間ごとの業務内容を確認

労務の仕事は時期ごとに特定の業務が発生するのが特徴です。年間スケジュールや特に重要な月を事前に把握しておけば、計画的に仕事を進めやすくなります。


4月

4月は新年度の始まりであり、労務担当者は人事異動などによる新体制へと対応するために忙しくなりがちです。新入社員が入社してくる場合、社会保険や雇用保険の書類を作成し、所定の機関に提出する必要があります。4月は多くの法改正が適用される月でもあるので、その対応にも注意しなければいけません

【4月の主な仕事内容】

・新入社員の社会保険加入手続き(入社から5日以内)
・新入社員の雇用保険加入手続き(入社の翌月10日まで)
・36協定更新の手続き(起算日の前日まで)
・昇格・降格に伴う給与改定
・定期健康診断の実施


6月

6月は労働保険の年度更新や住民税の改定が発生します。労働保険は年度更新として、給与額に基づいた前年度の精算と、新年度の概算保険料の申告・納付手続きを行います。
住民税は、各自治体から送付された「特別徴収税額の決定通知書」に従って、以降の給与に反映します。
また、事業規模が一定以上の会社は、高年齢者および障害者の雇用状況の報告書を作成し、管轄のハローワークに提出しなければなりません。企業によってはボーナスの支給作業を6月に行う場合もあります。

【6月の主な仕事内容】

・労働保険年度更新手続き(6月1日~7月10日まで)
・住民税の改定(毎年6月1日以降)
・高年齢者・障害者雇用状況報告の提出(6月1日~7月15日まで)


7月

7月は多くの企業でボーナスが支給される月なので、労務担当者はその処理に追われることになります。また、標準報酬月額の改定に伴って、算定基礎届を年金事務所または事務センターに提出しなければいけないのもこの時期です。

【7月の主な仕事内容】

・算定基礎届の提出(7月10日まで)
・賞与支給(7月に賞与支給がある場合)
・賞与支払届の提出(支給日から5日以内)


10月

7月に提出した算定基礎届によって改定された社会保険料が実際に給与へ反映されるのは、10月からです。また、9月には地域別最低賃金の発表があるのでチェックし、もしアルバイトやパートの時給が最低賃金以下であれば対応しなければいけません。

【10月の主な仕事内容】

・定時決定による社会保険料の改定
・地域別最低賃金の発表に伴う確認および反映(各地域の発行日以降)


11月

11月には、健康保険に関連して社員の扶養者状況をチェックし、そのリストを提出することが必要です。また、従業員が多い企業の場合、11月は年末調整に向けて動き始める時期に当たります。

【11月の主な仕事内容】

・被扶養者状況リストの提出(11月30日まで)


12月

12月は冬のボーナスの支給時期です。7月と同様、賞与支払届を作成・提出するなどの作業が生じます。
また、期限はまだ先ですが、年末調整に向けて申告書類などの配布・回収を進めていく必要があります。住宅ローン控除などの有無に応じて従業員へ必要書類の提出を促し、抜けがないかを確認しながら所得税の計算を行っていきます。

【12月の主な仕事内容】

・賞与支給(12月に賞与支給がある場合)
・賞与支払届(支給日から5日以内)
・年末調整


1月

1月は源泉徴収票の発行など、年末調整関連の作業を締めなければいけない時期です。月末までに給与支払報告書を各従業員の居住する自治体へ提出する必要もあります。年末調整に関してはなるべく12月中に作業を終わらせ、1月は何か不備があった際の予備期間として捉えておくのが安心です。

【1月の主な仕事内容】

・年末調整(1月31日まで)
・源泉徴収票の発行(1月31日まで)
・法定調書の提出(1月31日まで)
・給与支払報告書の提出(1月31日まで)

労務業務を効率化するポイント

上記で紹介した時期ごとの業務に加え、労務担当者は各社員の勤怠管理などの平常業務も同時にこなさなければいけません。多くの仕事をスムーズに処理していくために、次に紹介する方法を参考に業務効率化に取り組むことをおすすめします。


業務の流れを把握する

労務管理業務を効率化するためには、まず業務の流れを把握することが重要です。業務の全体的な流れを理解することで、時間配分をイメージでき、業務上の連携もスムーズに行えるようになります。
年間スケジュールとして紹介したように、労務管理では季節ごとに対処すべき仕事も異なってくるので、事前に先々のスケジュールまで把握し、早めに準備を始められるようにしておくことが大切です。事前に業務フローを作っておけば、作業時間や手戻りを減らしやすくなります。


システムやツールを利用する

労務では、情報管理や届出書類の作成が主な業務となるため、システムやツールを活用することが重要です。システムやツールにより、業務の自動化ペーパーレス化が可能になり、コスト削減ができると同時に、情報検索も容易になります。例えば、給与計算や社会保険手続きなどは、自動化することでヒューマンエラーを減らすことができます。

また、ビズらくで提供している「SmartHR」などのクラウド型の人事・労務管理システムを利用することで、人事データの一元管理などを行い、業務効率化を推進できます。

SmartHR

人事・労務の大幅な業務効率化を実現するクラウド人事システム。
雇用契約や入社手続き、年末調整などの多様な労務手続きを
ペーパーレス化し担当者の業務負担を大きく軽減します。

 

2023年に労務業務で気をつけたい法改正

労務においては、法改正により書類への記入内容や業務手順に変更が生じる可能性があるため、注意が必要です。すでに施工されたものも含め、2023年度に施行される法改正をご紹介します


月60時間超割増率引き上げ

働き方改革の一環として、2023年4月からは、月60時間を超える時間外労働の法定割増賃金率が50%以上になります。これは大企業だけでなく中小企業も同様です。労務担当者としては、いままで以上に社員の勤務時間の管理を厳に行い、賃金の計算に間違いがないよう気をつける必要があります。

<もっと詳しく知りたい方はこちら>
・ビズらくお役立ち記事
月60時間超の時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げ! 中小企業が注意すべき点は?
・厚生労働省
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます


賃金のデジタル支払い

2023年4月からは、希望する従業員に対して給与を電子マネーで支払えるようになっています。

昨今は電子マネーでさまざまな支払いを済ませられるようになっているため、一定の需要があると見込まれます。そのため、まだ対応していない企業でも今後は給与システムや給与に関する規定の変更が必要になる可能性があります。

参考記事:厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」

まとめ



本記事で紹介したように、労務の仕事では時期ごとにさまざまな業務が生じます。短期間のあいだに書類提出を済ませなければいけない業務も存在するので、労務管理者は時期ごとの業務スケジュールを事前に把握して計画的に仕事を進めることが欠かせません。ツールを活用して業務効率化を図り、法改正などにも注意しながら滞りなく仕事ができるよう準備しましょう。

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