年末調整の期限はいつまで? 期限が過ぎた場合は? 令和5年度の変更点も解説

年末調整に対して難しさを感じる方は少なくありません。
この記事では、年末調整をいつまでに行えばよいのかといった基本知識から、遅れた場合の対応方法、必要書類などについて解説します。
令和5年度(2023年度)には注意すべき変更点もあるため、企業の労務部門で年末調整を担当される方はしっかりチェックしておきましょう。

目次

年末調整とは? 簡単におさらい

そもそも年末調整とは、すでに年間で源泉徴収した税金の合計額と、実際の正しい税額とを一致させる手続きを指します。

企業は従業員へ給与を支払う際、所得税や復興特別所得税について源泉徴収を行っています。
しかし多くの場合、納めなければならない税額との間にはどうしても差異が生じるものです。そのまま放置してしまうと正しい納税とはならないため、年末調整といったルールが必要になるわけです。
なお、年末調整の対象は「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人であり、給与額が2,000万円を超えるなどの条件を満たせば対象外となります。
参考:国税庁|No.2665 年末調整の対象となる人

年末調整の提出はいつまで?

年末調整は、その名称から「その年の12月中に全て済まさなければならないのか」といった疑問を持たれがちです。しかし、そうではありません。

年末調整は1月1日からその年の12月31日までに支払われた給与に対して行われます。そして基本的に企業は12月に給与の還付、あるいは追加徴収をすることによって帳尻を合わせるわけです。
企業は、1月31日までに所轄の税務署長へ法定調書を提出すればよいとされています。

ほかにも入社時期が12月の場合、その年の年末調整が間に合わないのでは、と不安になる方がいるかも知れません。
まず、給与が翌月支給となっている場合、12月に働いた分は翌年1月に支払われます。
つまり、12月の給与が支払われる前に給与所得は発生しません。そのため、年末調整の対象にはならないとされています。
一方、当月分の給与をその月内に支払われる会社の場合は、12月中に給与所得が発生します。したがって年末調整が必要です。

なお、年末調整にまつわるさまざまな業務は、基本的に労務部門がまとめて担当するケースが少なくありません。労務の仕事の流れについては、ぜひ次の関連記事も参照してみてください。
▶労務の年間スケジュールは? 期間ごとの仕事内容と効率的に進めるポイント

年末調整の手続きのやり方・必要な書類

ここからは、年末調整はどのように手続きを行うのか、従業員が用意すべき必要書類などもふくめて一般的なフローを解説します。


年末調整の手続きのやり方

1. まず、1月1日から12月31日に支払うべき給与から、給与所得控除額を引いた金額を求めるところからスタートです。
給与所得控除後の金額は国税庁が毎年公表している「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で求められます。
子どもあるいは特別障害者などの場合は、所得金額調整控除の額を給与所得控除後の給与の額から引くことで算出可能です。

2. 次に、扶養控除の適用があれば、所得税控除額を差し引きましょう。

3. 2で求めた金額に対し、1,000円未満は切り捨てにして所得税の税率を当てはめ、税額を求めます

4. 年末調整で「住宅借入金等特別控除」がある場合には、3で求めた税額から「住宅借入金等特別控除」の控除額を差し引きます。

5. この控除額を差し引いた税額に102.1%をかけ、100円未満を切り捨てます。
その額が年間で納めなければならない所得税および復興特別所得税です。

6. 源泉徴収済みの所得税や復興特別所得税の合計額が、1年間に納めなければならない所得税および復興特別所得税の額より多かった場合には、
税金を納め過ぎていることになります。したがって、その差額の税額が本人へ還付されます

一方、源泉徴収の所得税および復興特別所得税の合計額が、1年間に納める所得税や復興特別所得税より少ない場合には、
差額の税額を徴収しなければなりません。この還付や追加での徴収までが企業側の手続きであり、原則12月中に行われます。
参考:国税庁|No.2662 年末調整のしかた


年末調整に必要な書類

年末調整を行うにあたって、給与所得者はいくつかの書類をそろえなければなりません。
ここではそれぞれ簡単に解説します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

「給与所得者の扶養控除等(移動)申告書」へは、配偶者や扶養している親族がいるかどうかなどの記入が必要です。
また、以前に提出した扶養の親族などで変更が生じることもあります。その場合も必ず申告しなければなりません

給与所得者の保険料控除申告書

「給与所得者の保険料控除申告書」は、民間の生命保険や地震保険などに加入している場合に提出が必要です。
すでに支払った保険料を控除対象としてもらえるため、正しく申告します。

給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

給与所得者が、配偶者控除や配偶者特別控除を受けたい場合には、この申告書が必要です。

年末調整の提出期限に遅れた場合の対処法

先に述べたように、年末調整は最終的に所轄の税務署へ1月末までに提出しなければなりません。
しかし、何らかの事情で遅れた場合はどのように対応すればよいのでしょうか。
ここでは従業員自身が遅れたケース、企業側が遅れたケースに分けて解説します。

従業員が提出期限に遅れた場合

例えば社内の提出期限が12月中旬で、それまでに提出されなかったとしても、
最終的に企業が1月31日までに法定調書を税務署へ提出できれば問題ありません。
しかし提出が2月にずれ込みそうな場合、企業側が年末調整を行えなくなります。
つまり従業員個人が2月から3月にかけて行われる確定申告にて申告しなければなりません

労務部門などバックオフィスの担当者はその場合のデメリットをあらかじめ従業員へ伝え、期日までの提出をうながすことが大切です


企業が提出期限に遅れた場合

一方、従業員が期日内に提出したのにもかかわらず、企業側の処理が間に合わず、提出期限に遅れた場合の対応は以下の通りです。
原則、1月31日までに税務署へ提出することと定められてはいるものの、その日に遅れても罰則などはありません。
数日程度の遅れなら、その旨税務署へ伝えておくことで待ってもらえます。
しかし、基本的には余裕を持って早めから準備し、1月31日までに提出できるようあらかじめ計画を立てておくことが重要です。

提出後に年末調整の内容を修正したい場合の対処法

法定調書を税務署へ提出した後に申告内容を修正したい場合、1月31日までであればやり直しが可能とされています。ここでは従業員自身が遅れたケース、企業側が遅れたケースに分けて解説します。しかし、2月以降になると企業経由での年末調整はできず、個別に本人が確定申告をしなければなりません
また修正した結果、追加徴収が発生した場合は年末調整のやり直しが求められ、追加の税金を納めることが必要です。

スムーズに年末調整の提出を済ませるコツ

年末調整の業務をあまりしたことがなければ、「何やら難しそう」と不安に思う方が多いかも知れません。
ここでは、できるだけスムーズに年末調整を終わらせるためのポイントを3つ紹介します。


年末調整のスケジュールを明確にする

年末調整は基本的に毎年発生する必要不可欠な手続きです。税務署への提出期限である1月31日に向けて、
それまでのスケジュールを明確化しましょう。年末調整の大まかなフローを頭に入れた上で、進め方をイメージしておきます。


社内で余裕を持たせて締め切りを設ける

スケジュールを決めたとしても、それぞれギリギリに設定されていると間に合わなくなる恐れがあります。
特に従業員からの書類提出が遅れると、年末調整全体の進行にも影響をおよぼしかねません。

年末調整の書類は、給与支給日の前日までに提出することが一般的です。
企業側は余裕を持ったスケジュールを設定し、従業員へ早めに周知しましょう


必要な書類は前もってそろえる

年末調整では、控除したいものの種類に応じて添付書類が必要です。
それらの書類も、基本的に毎年変わりはありません。もし生命保険控除や配偶者控除など、従業員本人にとって受けたい控除があれば、
早めに必要な書類を用意しておくことも大切です。もし書類が手元になければ、保険会社などに申告すれば取り寄せられます。

また、従来の年末調整は全て紙ベースでした。しかし現在は申告作業を全て電子化できるようになっています
わざわざプリントアウトする手間もなく、スムーズに年末調整を行えるようになっているため、活用しない手はありません。
納付に関してもインターネットバンキングでキャッシュレス納付が可能です。

最新(令和5年度)の年末調整の変更点や注意点

令和5年度(2023年度)の税制改正では、年末調整に関する変更点はありません。
しかし、令和4年度(2022年度)の税制改正が、令和5年から適用されます。
ここでは、変更内容で注意すべき重要なポイントを3つ解説します。

住宅ローン控除区分が追加や変更になる

住宅ローンの支払いで控除される区分について、令和4年(2022年)に改正が行われ、年末調整は令和5年(2023年)から対象となります。
住生活を豊かにしたり、来たる2050年にカーボンニュートラルを実現したりするため、住宅について、省エネ性能向上・長期優良住宅の取得が進んできました。そこで、住宅の省エネ性能などの高さになどに応じて変更されます。

新築住宅の場合は、その品質および入居開始年に応じて借入限度額が2,000万円から5,000万円の範囲となり、控除率は一律で0.7%です。
一般的な中古住宅では、借入限度額は2,000万円から3,000万円となり、控除率は0.7%
となります。
また、震災再建住宅では借入限度額が5,000万円で控除率は0.9%となり、控除期間が令和7年12月31日まで4年延長されています。

さらに、住宅ローン控除が適用される者の所得要件の引き下げも行われました。
具体的には、「3,000万円以下」であった所得要件が「2,000万円以下」へと変わっています
参考:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
参考:国税庁|No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)


非居住者にあたる扶養親族の適用範囲が変更される

2023年1月1日から、30歳から69歳の非居住者である親族が以下の条件に該当しない場合、扶養控除の範囲を外れることにも注意が必要です。

1.親族が海外留学で、国内に住所(自宅)を持たなくなった場合
2.親族が障害を持っている場合
3.親族が保護者から年に38万円以上の生活費や教育費を受け取っている場合
引用元:国税庁|令和5年1月以後に 非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ


退職手当を有する配偶者や扶養親族欄が追加される

一般的に退職手当を受け取った場合、所得税と住民税では、扶養に関する合計所得として考えるかどうかの違いがあります。
具体的には、所得税なら合計所得にふくむものの、住民税はふくみません。
退職金を受け取った配偶者あるいは扶養親族がいる場合も同様です。
所得税では扶養の所得要件に合致しないものの、住民税では扶養対象となるケースがあり、問題視されていました

そこで令和5年(2023年)に提出する「扶養控除申告書」には、「住民税に関する事項」に『退職手当を有する配偶者・扶養親族』の欄が追加されました。これで、扶養控除の適用漏れを防止できると考えられます。

年末調整の業務効率化を目指すならツールが便利

年末調整の手続きを手作業で行っている場合、時間がかかったりミスが増えたりしがちです。
1月31日までの期限に間に合わせるためスムーズに進めたいのであれば、次のようなツールを使うのがおすすめです。


SmartHR|最短3分で書類提出完了

SmartHRは、ユーザーにとってわかりやすさ・使いやすさをとことん追求したUI・UX設計になっているのがポイントです。
従業員が、年末調整を理解しやすいようにヒントメッセージを送れたり、期限に合わせてリマインドを自動設定できたりします。煩雑な作業を減らしたい、あるいはほかのより重要な業務に専念したいといった場合にはぴったりです。

SmartHR

人事・労務の大幅な業務効率化を実現するクラウド人事システム。
雇用契約や入社手続き、年末調整などの多様な労務手続きを
ペーパーレス化し担当者の業務負担を大きく軽減します。

 


freee人事労務|データ収集から申告まで効率化

freeeは、従業員がスマートデバイスやパソコンで簡単に入力するだけで、年末調整で必要となる情報を一元管理できるアプリケーションです
わざわざ用紙を印刷し従業員に配布する必要がなく、コストカットにもなります。
入力済みのデータから自動的に申告書類を作成すれば、ペーパーレスでの申告も可能です。
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ジョブカン労務HRは、面倒な年末調整がたったの3ステップで行えるのが魅力のツールです。誰でもわかりやすいアンケート方式で、必要な控除を選ぶと自動で申告書を作成してもらえます。
また、その後には控除申告書と給与データをもとに、源泉徴収票も自動で作成されるため、非常にスムーズです。

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年末調整は従業員に正しく理解をうながすとともに、このように便利なツールも活用することで、余裕を持って進められます。

まとめ:年末調整は期日を守って計画的に!

年末調整は、従業員からの書類をまとめて税務署へ提出することになるため、なかなかスムーズにいかないと頭を悩ませる担当者の方も少なくありません。期日に向けて余裕を持った計画を立てることはもちろん、ツールなどもうまく活用しながら進めていくようにしましょう。
年末調整システムは、導入することで担当者および従業員の業務効率化が見込めることは間違いありません。無料トライアルできるサービスも多いので、まずは使い勝手や業務の変化を体験してから導入を決めるのもおすすめです。

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