【2024年】法改正一覧をチェック! 人事労務に向けて変更点を一挙紹介

2024年が迫る中、注目すべき多くの法改正が予定されています。この記事では、労働環境、障害者雇用、健康保険、年金制度など、幅広いテーマにわたって2024年(一部2023年)の主要な法改正を一覧で解説します。今後の人事労務に大きな影響を与えるこれらの改正にどう対処すべきなのか、しっかりと確認しておきましょう。


目次

2024年に施行される法改正一覧

社会の変化とともに、毎年企業経営に影響を与える多くの法律が改正されていますが、2023年以降も法改正の波は続きます。2025年までには労働基準法、電子帳簿保存法、働き方改革関連法、育児介護休業法、運送業の働き方改革、年金制度改正法など、経営に直接関わる法律改正がされています。

この記事では、2024年(および一部2023年)に施行される予定の法改正を一覧形式でご紹介します。今後の経営戦略や人事政策に影響を与える可能性のある改正点を明らかにし、事前の対策を練るための貴重な情報を提供します。


【2024年1月1日】電子帳簿保存法の宥恕期間が終了

宥恕(ゆうじょ)期間」とは、2022年1月に改正された電子帳簿保存法に取り入れられた、企業が電子取引の情報を「磁気的記録」に保存するための2年間の猶予期間を指します。

この猶予期間は2023年12月31日で終了となりますが、令和5年度税制改正大綱によって、新しい猶予措置が電子帳簿保存法の基本条項に組み込まれることになりました。具体的には、税務署長が「相当な理由がある 」と認めた場合、保存義務者は電磁的記録を紙で保存することができるようになります。この変更により、宥恕期間は2023年12月31日をもって廃止 されることとなりました。
出典:財務省「令和5年度税制改正の大綱(6/10)」


【2024年2月1日】労働安全衛生規則の改正

「労働安全衛生規則」が改訂され、2024年2月からテールゲートリフターを活用する荷役作業において特別教育が必須となります。テールゲートリフターは、トラックの後ろ側に取りつけられる昇降機構のことで、特に台車や高精度機器の取り扱い、またはフォークリフトやクレーンが使用不可能な場所で、作業効率を大幅に向上させる役割を果たします。教育を省略して作業を許可する事業者に対しては、厳格な罰則が設けられています。

改正の背景にあるのは、貨物自動車での荷の積み込みや積み卸しに伴う、荷台からの転落や墜落、さらには崩れた荷物の下敷きになるといった労働災害の発生リスクです。陸上の貨物運送における労働災害は年々増加傾向にあるため、ヘルメットの着用などと並んで、安全対策が一層強化 されます。
出典:厚生労働省「貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則等の一部改正のポイント」 p.1
出典:厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」p.3


【2024年4月1日】労働基準法施行規則の改正で無期転換ルールが明確化

2024年4月より、労働条件の明示に関する規則 が改定されます。この変更は厚生労働省によって労働基準法施行規則の一部を修正する形で行われました。労働者と雇用者間での認識の不一致や、有期契約から無期契約への変更に関するトラブルを未然に防ぐことが目的とされています。

今回の改正により、有期契約労働者に対して「無期転換申込権」が発生する更新の際に、無期転換の申し込みが可能である旨(無期転換申込機会)を明示することが義務化 されます。使用者は機会の明示に加えて、無期転換後の労働条件も明確にしなければなりません。この措置の目的は、労働者自身が自分の権利を理解し、それに基づいて無期転換を選ぶかどうかを判断できるようにすることです。

また、今回の改定によって、全ての労働契約の成立時や有期契約の更新の際に、就業場所や業務の変更の範囲も明示が必要になります。従来は採用直後の勤務地と担当業務の明示だけで十分でしたが、新しい規定では採用直後の勤務地や業務内容、それらの変更可能性も明記 しなければなりません。
出典:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」p.2


【2024年4月1日】労働基準法施行規則の改正で裁量労働制が見直し

裁量労働制は、一般的に「みなし労働時間」を基盤に給与が決定される仕組みです。この制度のひとつである専門業務型裁量労働制は、新製品のデザイン、コピーライティング、テレビ制作、弁護士業務、公認会計士業務など、専門性が求められる19種類の業務を対象に、業務の方法や時間の管理を労働者自身が決める必要がある際に適用されます。

今回の改正に伴い、専門業務型裁量労働制の適用対象業務が拡大され、銀行や証券会社で顧客のM&A(合併・買収)に関するリサーチ、分析、そしてその結果に基づいたM&Aの戦略提案やアドバイスを行う業務が新たに加わります。

裁量労働制は、元々は多様な働き方を可能にするために設計されましたが、現実には長時間労働が常態化する傾向があり、制度が不正確に適用されるケースも報告されています。その対策として、2024年4月1日以降、専門業務型裁量労働制の導入・継続の際には、労働者からの同意の取得および、同意を得られなかった労働者に対して、 不利な扱いや解雇をしないと明記する義務が生じます。
出典:厚生労働省「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案(概要)」p.2


【2024年4月1日】障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則改正で障害者雇用率を引き上げ

現在、民間企業における障害者の法的な雇用率 は2.3%ですが、これが2024年4月には2.5%に、さらに2026年7月には2.7%に順次上げられる予定 です。この変更により、障害者を少なくとも1人採用する必要がある企業の対象が拡大します。具体的には、2024年4月からは従業員数が40人以上の企業、2026年7月からは従業員数が37.5人以上の企業が該当することになります。

特定の業種で障害者の雇用が一般的に厳しいとされる場合に、その雇用責任を緩和するために「除外率制度」 が設けられています。この制度も2025年4月に改訂を控えており、除外率が一律で10ポイント低下することになっています。
出典:労働政策審議会障害者雇用分科会「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」p.1


【2024年4月1日】労働時間法制の見直しで時間外労働の上限規制を適用

2019年4月に改訂された労働基準法により、「36協定による残業時間の上限」が改められました。時間外労働の上限に関する規制は、大手企業では2019年4月から、一方で中小企業においては2020年4月からすでに施行されています。

建設業や自動車運転業などに関しては5年間の猶予期間が設けられていますが、2024年4月1日からは、残業の上限が月45時間、年間で360時間と厳格に制限されます。特別な状況が認められない限り、これを超過することは許されません。これらの業界では、他の産業に比べて長時間労働と高齢労働者の問題が深刻で、働き方を一変させるのは容易ではありません。そのため、多くの企業が早めの対策として、働き方改革の準備を進めています。
出典:厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」p.5
出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」


適切に労働時間を管理するために役立つ記事はこちら

【2024年4月1日】労働安全衛生規則の改正で化学物質の管理が強化

2022年5月31日に、厚生労働省は化学物質による災害から労働者を守るため、労働安全衛生規則の一部を見直しました。特に、4日以上の休業を必要とするような労働災害(がんなどの長期発症を除く)を引き起こす可能性のある化学物質が、今回の改正の主な焦点です。

この改正により、国はばく露上限を設定し、高危険性や有害性のある化学物質に関する情報をより広く伝える体制を強化 します。事業者は、これらの新基準とリスク評価の結果に基づいて、労働者が労働災害から保護されるような対策を講じる必要があります。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法の新たな化学物質 規制労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の概要」p.1,2


【2024年10月1日】厚生年金保険法の改正で年金制度の機能強化

2020年に成立した「年金制度改正法」により、短時間労働者が社会保険の加入対象となる企業規模が段階的に引き下がることが決定しました。2022年10月から中規模企業(従業員数101~500人)に、そして2024年10月からは従業員数が51~100人の中小企業も社会保険の適用範囲拡大の対象になります。
出典:厚生労働省年金局「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律
参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布)」p.1


また、年金の繰り下げ受給についても新たな変化があります。以前の年金制度では、年金の繰り下げ受給が可能な年齢は最大で70歳まででしたが、この法改正で上限が75歳まで引き上げられました。結果として、年金の受給開始時期が60歳から75歳までと、より広い範囲で選べるようになりました。
出典:厚生労働省年金局「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律
参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布)」p.47


【2024年12月8日】健康保険法の改正でマイナンバーカードと健康保険証を一体化

2023年6月2日に、マイナンバーカードと健康保険証の統合を含む改正マイナンバー法が可決されました。この改革によって、2024年秋からは紙やカード形式の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として使用することが事実上必須となります。

ですが、2024年秋以前に発行された健康保険証については、その有効期限(最も遅くても2025年秋まで)が来るまでは、今まで通り使うことができます。

また、マイナンバーカードを持っていない方や、登録ができていない方、あるいはカードを紛失した方でも医療を受けられるように、健康保険組合などが「資格確認書」を無償で提供する計画もあります。この資格確認書の有効期限は当初1年とされていましたが、上限が5年に延ばされる方針です。

人事担当者や労務担当者は、新しいマイナンバー制度の利点を理解し、従業員に向けて健康保険証の廃止とマイナンバーカードへの移行、さらには「資格確認書」の発行について、しっかりと呼びかける必要があります。
出典:デジタル庁「マイナンバー法等の一部改正法案の概要」p.1
従業員のマイナンバーはクラウドツールで管理ができます。


従業員のマイナンバーの管理におすすめツール

まとめ

2024年には労働環境、障害者雇用、健康保険、年金制度など、多面的な法改正が予定されており、企業にとってのターニングポイントとなるはずです。今後のビジネス環境において、今後の法改正に適切に対応することが、持続的な成長と社会的信頼の確保に結びつきます。事前の準備と理解が大切なので、しっかりと対策を進めましょう。


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