システム導入の稟議書 承諾される書き方は?作成時のコツも

会議を開くことなく、関係者の合意のもと物事を進められるのが「稟議」です。特に日本企業では、新たな事案を決定する際よく用いられます。稟議では、起案者が作った稟議書を各承認権限者が回覧し、承認を行いますが、稟議書の書き方次第でスムーズに承認を得られるかが変わってきます。本記事では、稟議書の効果的な書き方について解説します。

目次

稟議書の書き方

稟議書は一般的に、「承認までのスピードが遅い」「責任の所在が分散されてしまう」「リスクの点検・発見がされにくい」などのデメリットが指摘されますが、適正に運用すれば「会議を開かずとも組織が意思決定できる」「意思決定のプロセスが明確になる」「情報が共有されることで、新たな課題を発見できる場合がある」などの大きなメリットも得られます。プロジェクトが当初の計画どおりに進んでいるかチェックするのにも有効です。

稟議書が求められるシーンは多々ありますが、代表的なのが製品・サービスを購入する際です。近年では働き方改革などに伴って、各種オンラインツール・システムを新しく導入するケースが増えており、その際に稟議を行うことも少なくありません。稟議書のフォーマットは組織によって異なりますが、基本的な項目として以下の内容を盛り込みます。


1.件名・概要

稟議書の件名は、承認を得たい内容をごく簡単に記載する欄です。「システムの新規導入のご提案」「システムの新規導入について」など、メールの件名と同じようなイメージで短くまとめます。

概要は、申請内容のあらすじを書く欄です。詳細は「目的」の欄に書くので、ここでは簡単にまとめるだけで構いません。


2.実行の目的・目標

システムを導入する目的・目標を明確にまとめる欄です。目的・目標が複数あれば、全て網羅して記入します。「改正された労働基準法に則った勤怠管理を行うため」「勤務時間の集計を月〇時間から月〇時間へと削減させる」などが、目的・目標の例として挙げられます。


3.申請理由・背景

申請する理由、背景を記載する欄です。「現状の運用は、〇年度から改正される法律に即していない」「手動で作業せざるを得ないことから、平均〇時間/月の余分な時間がかかっている」など、なるべく数字も交えながら客観的に、承認権限者が納得できるよう説明しましょう

新しいシステムの導入には少なからず費用がかかるため、導入する理由・背景が明確にされていないと、承認権限者が「不必要」だと判断し、却下する可能性が高まってしまいます。事情を全く知らない第三者が読んでも分かるように書くのがポイントです


4.申請内容

申請する内容を分かりやすく説明する欄です。以下のような項目を漏らさず記載しましょう。

申請内容項目
・製品・サービスの概要、機能
・販売元
・契約内容(プランの内容、サブスクリプション型か買い切り型かなど)
・費用(初期費用、ランニングコスト、オプションの追加費用、更新費用など)

あわせて、その製品・サービスを選定した理由も明示してください。そうでなければ、「選定の理由が不明瞭」「類似の製品とも比較検討をしてほしい」といった理由などで差し戻しになる可能性があります。「ビズらく」などのサイトを用いて、費用相場や平均的な機能、各製品に備わっているプラスアルファの機能などを、あらかじめチェックしておくのがおすすめです。

参考:ビズらくおすすめ製品資料一覧


5.得られるメリット・リターン

申請した内容を実践することで、自社にどのようなメリットとリターンがあるのかを説明する欄です。「業務時間の削減」「費用の削減」などが挙げられるケースも多いですが、それだけでは漠然としており、「効果が不明瞭」として差し戻しの対象になりがちです。そのため、「〇〇のプロセスに本ツールを導入することで、従来〇分かかっていた作業が自動化されるため、1件あたり〇分(年間〇分)の作業時間が削減される」など、数字も交えながら 客観的・論理的に理由を書くようにしましょう

それと同時に、想定される リスクやデメリットも明記することが大切です。稟議において承認権限者は、ほぼ起案者から提示される情報だけで判断しなければいけません。そのため、リスクを隠されると、企業にとってのマイナスの影響を考慮して、却下・差し戻しにせざるを得なくなります。それを防ぐためには、「導入直後は操作に慣れず、一時的にパフォーマンスが〇%ほど低下する可能性があるが、ベンダー側がトレーニングを行うため最長1か月程度でパフォーマンスは回復し、その後は〇%の向上が見込める」など、対策も盛り込みながら書くようにしましょう

システム導入で承諾を得られる稟議書を作成するコツ

稟議を行うにあたっては、起案から承認までをスムーズに進めることがとても大切です。以下のコツを意識しながら稟議書を作成しましょう。


文章は簡潔に記載する

稟議書に限らず、ビジネスシーンでは簡潔な文章が好まれます。伝えたい事柄が複数あれば数字を振って箇条書きにするなど、一読しただけで意味が伝わる書き方を心がけましょう

説明の裏づけとなるデータは不可欠ですが、あれもこれもとデータを盛り込んでも焦点がズレてしまいます。専門用語や言い回しも、伝わらない可能性があるため避けましょう。また「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「ペーパーレス」「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」など、近年生まれた用語を多用するのもあまりおすすめしません。企業にもよりますが、なるべく日本語の言葉に言い換えた方が、共通認識を持ちやすくなります


メリットを詳しく書く

システムを導入するメリットや費用対効果、投資額の回収予定期間などは、なるべく 数値化して客観的に説明するようにしましょう

参考までに、勤怠管理システムの導入を申請する場合の例文をご紹介します。

(例文)

  • 現状の課題
    • 各従業員の勤務時間の管理・集計を経理担当者がExcelで行っており、月あたり〇分の時間がかかっている。
    • 現状の紙のタイムカードは、打刻忘れや不正打刻の問題がある。さらに、改正された労働基準法に則った正確な勤務時間や残業時間、有給休暇の取得状況などの把握ができていない恐れがある。
    • テレワークなどに対応しにくい。

  • 期待できる効果
    • 本システムを導入することで経理担当者の負荷が減り、月あたり〇分の大幅な時間削減が見込める。
    • 法律に則った、より正確で低負荷な勤怠管理体制を構築できる。
    • 多様化する働き方に対応しやすくなる。

なお、製品・サービスの機能については、どういった点が自社に適しているのかをまとめた上で、公式のパンフレットなどを添えましょう。稟議書がオンラインの場合、公式WebサイトのURLなどを添付するのも有効です。


事前に根回しを行う

関係者の時間を必要以上に奪うのは双方にとって非効率ですが、適正な根回しを行うことはとても有効です。稟議書を回付する前に、あらかじめ関係者に対して稟議・稟議書に関する内容を相談し、得られた意見やフィードバックを反映させることで、よりスムーズな承認につながります。意見を得る際、形式ばる必要はなく、雑談レベルで問題ありません。

上司などだけでなく、関係する部署の担当者から意見やスケジュール感などを聞いておくのも重要です。稟議書に、すでに別部署の意見も聞いた上で申請していることを記載すれば、承認権限者の「別の部署から受け入れられるだろうか」「協働するマンパワーがあるだろうか」といった懸念がひとつ解消されることになります。

これらの根回しを行うにあたっては、必ずしも関係者全員の意見を聞きに行く必要はありません。また、意見を得るための根回しは有用ですが、その場で了承を得ようとすると、稟議書が形骸化しかねないため注意しましょう。稟議書が形骸化してしまうと、のちにその稟議に関連したトラブルが起こった際、責任の所在があいまいになる可能性があります。

まとめ:システム導入の必要性を簡明にまとめましょう

稟議は会議の手間を省けますが、その一方で、承認までに時間がかかるというデメリットもあります。それを防ぐには、承認されやすいよう稟議書の書き方に工夫をしなければいけません。目的や背景、メリット、想定されるデメリットと対策などを、客観的な数値やデータも交えながら明確に記載しましょう。

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