新入社員の入社手続きは工数が多いため、担当する社員が作業に不慣れな場合や、忙しい職場などでは負担が大きくなりがちです。そこで本記事では、入社手続きで役立つチェックリストとともに、会社側・内定者側それぞれで準備すべき必要書類について解説します。手続きを効率化する方法もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
入社手続きの会社側チェックリスト
新入社員を迎える際、会社側はいくつかの手続きを行います。ここで漏れがあると、手間が増えたり法的な問題に発展したりする可能性があるため注意しましょう。入社手続きの会社側チェックリストとしては、主に以下の4つが挙げられます。
入社手続きの会社側チェックリスト
- 会社側で準備すべき必要書類を作成する
- 内定者に必要書類を準備してもらう
- 法定三帳簿を作成する
- 行政手続きを行う
入社手続きで会社側が準備するべき必要書類
会社側が準備する書類のチェックリストは以下です。書類ごとに用意するタイミングが異なるため、スケジュールを考えながら進めましょう。
入社手続きで会社側が準備するべき必要書類
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 入社誓約書(入社承諾書)
- 採用通知書(内定通知書)
- 身元保証書
以下、各書類について簡単に解説します。
雇用契約書
雇用契約書は民法第623条に基づき、雇用主(企業)と従業員の間で雇用関係を明らかにする文書です。一般的には契約期間、賃金、業務内容、勤務場所、労働時間などが記載されます。雇用契約は口頭でも有効なため、必ずしも雇用契約書を作成する必要はありませんが、作成しておくと雇用に関するトラブルを防止しやすくなります。
労働条件通知書
労働条件通知書は労働基準法第15条第1項に基づき、 必ず作成しなくてはいけない書類 です。内容は、必ず記載する「絶対的明示事項」、会社の方針によって記載する「相対的明示事項」に分かれます。絶対的明示事項は契約期間、賃金、業務内容、勤務場所、労働時間など、前述の雇用契約書と重複する項目が多々ありますが、それぞれの書類が持つ意味合いが異なるため、手間だと思っても漏れなく記載しましょう。
入社誓約書(入社承諾書)
入社誓約書は、内定者の入社意思と企業側が従業員に守ってほしい規則(就業規則)を確認する書類です。入社のタイミングではなく、内定期間中に作成する必要があります。就業規則の明記は就労後のトラブル防止につながるため、できる限り詳細な記載がおすすめです。
採用通知書(内定通知書)
採用通知書は、会社側の採用意思を伝える書類です。発行義務はありませんが、作成するのであれば内定通知後に内定者へ送付します。内定通知をせず、採用通知書に内定通知を含ませる場合もあります。
身元保証書
身元保証書は、入社する人の身元(経歴、素性など)を第三者が保証人となって証明する書類です。入社後に本人が会社へ損害を出した場合、保証人が連帯して責任を取る誓約書の意味も含まれています。保証期限は最大5年とされ、必要であれば更新可能です。どの立場の人を保証人にするかは会社が指定できますが、多くの場合は両親や親戚などです。
入社手続きで内定者に準備してもらう必要書類
会社側が用意する書類のほか、内定者に用意してもらう書類があります。以下のチェックリストを参考にしてください。
内定者に用意してもらう書類
- マイナンバー
- 年金手帳
- 扶養控除等申告書
- 雇用保険被保険者証(転職時)
- 前職の源泉徴収票(転職時)
給与振込口座の申請書転職してくる内定者の場合は、以下の2種類も必要です。
それぞれの種類について内定者に理解してもらい、スムーズな手続きを進めましょう。
マイナンバー
日本に居住し、住民票を持つ全ての人に割り当てられた12桁の番号です。支払調書や源泉徴収票の発行、税金関連の手続きに必要なため、本人から会社に通知してもらいます。さまざまな情報に紐づけられた非常に大切なナンバーであるため、会社側は「特定個人情報」として厳重に取り扱う必要があります。
年金手帳
公的年金に加入する20歳以上の人に交付される手帳です。基礎年金番号をはじめとした重要情報が記載されています。
なお、年金手帳は2022年4月に廃止されました。すでに持っていた人はそのまま使用しても問題ありませんが、基礎年金番号やマイナンバーで管理できるため、会社の方針によっては年金手帳を提出しなくてもかまいません。
扶養控除等申告書
扶養控除申告書は、年末調整に必要な書類です。16歳以上の扶養家族がいる人が所得税の控除を受けるための書類ですが、扶養家族の有無や既婚・独身などに関わらず、従業員全員が提出しなければいけません。提出しなければ扶養控除が受けられなかったり、適切な納税が難しくなったりする可能性があります。
給与振込口座の情報
給与振り込みのための口座番号を記載する書類です。口座番号を直接記載したり、番号が分かるページのコピーを提出したりするなど、形式を会社側で指定できます。会社によっては金融機関を指定したいケースもあるかもしれませんが、「この金融機関の口座のみ」と通知できないことになっています。
ただし、「この金融機関の口座にしてほしい」という「協力要請」であれば問題ありません。
雇用保険被保険者証
雇用保険加入を証明する書類です。雇用保険に加入すると「被保険者番号」が割り振られ、転職後も同じ番号が使われます。転職者の場合、一般的には前職を退職する際に渡されています。
ただし、公務員は雇用保険の対象外のため、前職が公務員だった人は雇用保険被保険者証を持っていません。
前職の源泉徴収票
源泉徴収票は、会社から支払った金銭の総額と、そこから天引きされた所得税額が記載された書類です。年末調整に必要になるため、転職者には前職で発行された源泉徴収票の提出を求めましょう。
例外として、12月の段階で振り込まれるべき金銭が全て振り込まれた状態で前職を退職し、翌年1月以降に入社している場合は提出不要です。
入社手続きで会社側が行う保険の対応
入社後に適用される保険に、社会保険と雇用保険があります。どちらの保険も、会社側が入社手続きのひとつとして対応します。
社会保険
社会保険の手続きでは、雇用してから5日以内に事務センターか年金事務所へ「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」の提出が必要です。
また、協会けんぽ(全国健康保険協会)以外の健康保険組合に加入している場合は、各健康保険組合にも提出します。
社会保険は、一般労働者と短時間労働者で異なる加入条件が適用されます。一般労働者としての社会保険への加入は、75歳未満の正社員、代表者、役員、または70歳未満で週や月の労働時間が常時雇用者の3/4になる人が該当します。短時間労働者としての社会保険への加入は、週に20時間以上の労働を行い、賃金が月額8.8万円以上になる、学生ではない人が該当します。
なお、将来的に雇用形態が一般労働者から短時間労働者へ、または短時間労働者から一般労働者へ変更した場合、「被保険者区分変更届」が必要です。
雇用保険
雇用保険の手続きは、雇用した月の翌月10日までに行います。ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が必要です。雇用保険の対象になる条件は、週の所定労働時間が20時間以上、かつ雇用見込みが31日以上であることです。
また、所定労働時間には残業が含まれない ため注意しましょう。
会社側で行いたい入社手続きの効率化方法
入社手続きには、それなりに労力がかかります。内定者の人数が多い場合は特に、入社手続きを担当する社員の負担は大きくなります。そこでおすすめしたいのが、入社手続きを効率化するツールの導入です。
導入するツールは従業員が使いやすく、簡単に入力できるものがよいでしょう。使いにくいツールだと、かえってミスや負担が増えるなどして逆効果となる恐れがあります。誰もが使いやすいツールであれば、ミスや工数の削減に寄与し、労務関連を担当する従業員の負担低減につながります。
さらに、ツールを活用することで対象の書類が回収されているか、記入されているかといった状況も可視化されるため、手続きの漏れを防げるメリットもあります。
なお、ひと口にツールと言ってもさまざまな製品が提供されているため、自社に適したものを選ぶことが大切です。自社に必要な機能を洗い出し、価格や操作性、サポート体制なども考慮しながら慎重に比較検討しましょう。
まとめ:ミスなく入社手続きの準備を進めましょう
入社手続きでは必要書類の準備をはじめ、帳簿作成や社会保険・雇用保険などの行政手続きが必要です。ミスがあると後々トラブルに発展しかねないため、よく注意しながら手抜かりのないよう進めましょう。
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