2018年6月に参院本会議で「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が成立しました。それによって労働法に関する複数の法律が改正され、企業では労働環境の抜本的な変革が求められています。本記事では働き方改革関連法のポイントや違反時の罰則について解説します。
働き方改革関連法とは?
働き方改革関連法とは、長時間労働の是正や柔軟な働き方の実現、公正な待遇の確保などを目的として、労働環境の変革を促進するために制定された法律の総称です。働き方改革関連法は2018年6月29日に参院本会議で成立し、2019年4月より順次施行されています。「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」「じん肺法」「雇用対策法」(現:労働施策総合推進法)「労働契約法」「パートタイム労働法」(現:パートタイム・有期雇用労働法)「労働者派遣法」などに関する法律が改正されました。事業者は法改正の要点を把握して労務管理の最適化を図る必要があります。
働き方改革関連法の改正ポイントと違反時の罰則
1.時間外労働の上限規制
原則として労働時間の上限は1日8時間・1週40時間と定められており、時間外労働をする場合は労使間で36協定の締結が必要です。そして法改正前は特別条項付き36協定を締結することで、実質無制限の時間外労働が可能な状況でした。しかし働き方改革関連法の施行により、特別条項付き36協定でも上回れない時間外労働の明確な上限規制が設けられました。この上限規制は大企業では2019年4月1日、中小企業の場合は2020年4月1日より施行されています。建設事業など一部の業種では猶予されていますが、2024年4月1日からは適用されます。
上限規則に違反した場合の罰則
法改正前は特別条項付き36協定における時間外労働の上限は明示されていませんでした。しかし法改正によって時間外労働の上限が定められたため、違反した事業者は6ヵ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金が科される可能性があります。
2.年次有給休暇の確実な取得
年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対し、最低限の基準として年5日の取得義務が課されました。この法改正は大企業・中小企業ともに2019年4月から施行されています。年次有給休暇は使用者による時季指定か労働者からの請求、あるいは計画年休によって取得させなくてはなりません。
タイムカードや表計算ソフトによる勤怠管理では有給休暇の消化状況を把握しきれず、見落としが発生する可能性があります。年次有給休暇の取得に関する違反は労働者一人あたり一罪として取り扱われ、従業員数の多い組織ほど罰則の負担が大きくなるため、残業時間や有給休暇の取得状況などを一元管理できる勤怠管理システムの導入が推奨されます。
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年次有給休暇の取得に違反した場合の罰則
年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、または年次有給休暇の時季指定に関する事項を就業規則に記載していない場合は30万円以下の罰金が科される可能性があります。労働者の指定する時季に年次有給休暇を与えなかった場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象です。
3.時間外労働に対する割増賃金率引き上げ
2010年に実施された労働基準法の改正により、月の時間外労働が60時間を超過した分の賃金について、割増率25%以上から50%以上に引き上げられました。ただし事業者の財務状況に多大な影響を与えるため、時間外労働に対する割増率が50%以上になるのは大企業のみで、中小企業は対象外となっていました。しかし働き方改革関連法の施行によって猶予措置が廃止され、2023年4月より中小企業でも月60時間を超える時間外労働に対する賃金割増率が50%以上に引き上げられました。
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割増賃金未払いでの罰則
時間外労働に対する割増賃金の未払い、または50%に満たない割増率での支給は罰則の対象です。6ヵ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金が科される可能性があります。
4.フレックスタイム制の拡充
フレックスタイム制とは、あらかじめ定められた総労働時間のなかで、従業員自身が始業時刻と終業時刻を決定する制度です。法改正前は最長1ヵ月を清算期間として、所定労働時間の枠内で始業・終業時刻の選択を従業員の裁量に委ねる仕組みとなっていました。働き方改革関連法の施行により、清算期間の上限が1ヵ月から3ヵ月に拡大されました。労働者は最大3ヵ月の清算期間のなかで自分の都合に合わせて労働時間を調整できるため、より柔軟かつ多様なワークスタイルに対応できます。
清算期間の届け出義務違反での罰則
フレックスタイム制の導入において清算期間が1ヵ月を超える場合、労使協定を締結して労働基準監督署に届出をしなくてはなりません。この届出を行わなかった場合は30万円以下の罰金を科される可能性があります。
5.産業医および産業保健機能の強化
働き方改革関連法の施行により、事業者は長時間労働者に関する情報を産業医に提供することが義務付けられました。そして常時使用する労働者が50人以上の事業所では産業医の選任義務があります。また、労働者の健康を確保するために必要と判断された場合、産業医は企業に対して勧告をする権限を有します。勧告を受けた事業者は、勧告の内容、勧告を踏まえて講じた措置、または講じようとする措置の内容を衛生委員会へ報告しなければなりません。ただし産業医の意見を踏まえて必要な措置を取る必要があるものの、従業員にとっては義務ではないため強制はできない点に注意が必要です。なお、現時点では違反時の罰則は定められていません。
6.勤務時間インターバル制度の導入促進
勤務間インターバル制度とは、勤務終了後から翌日の出社までの間に一定の時間を確保する制度です。働き方改革関連法に基づき、勤務間インターバル制度の導入が努力義務化されました。厚生労働省では9~11時間以上のインターバルを推奨しており、従業員の疲労やストレスを軽減するとともに、ワークライフバランスの充実や健康経営の促進が期待されています。ただし勤務間インターバル制度はあくまでも事業者の努力義務であり、現状では制度の設置に関する明確なルールや違反時の罰則は明示されていません。
7.不合理な待遇差の禁止
働き方改革関連法の施行に伴い、大企業は2020年4月、中小企業では2021年4月より正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇差が禁止されました。これまで国内では正規雇用の社員と非正規雇用の労働者の待遇に格差がある場合が多く、非正規雇用労働者のモチベーションや生産性の低下、労働力人口不足などの観点から問題視する声が少なくありませんでした。雇用形態による格差の解消を目的として提唱されたのが同一労働同一賃金という考え方です。事業者は正規雇用の社員と非正規雇用労働者の待遇格差を是正する義務が生じるとともに、待遇に関する説明義務が強化されました。
まとめ:働き方改革関連法に違反しないために対策をとりましょう
働き方改革関連法の施行によって時間外労働の上限や年次有給休暇の取得義務数などが明示され、違反した事業者には罰則が科されるようになりました。働き方改革関連法に対応するためには従業員の勤怠状況を一元的に管理できる勤怠システム の導入が有効です。法律に違反せず適切な勤怠管理を行うために対策をとりましょう。
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