電子帳簿保存法違反の罰則とは? リスクと違反防止対策

2022年に改正された電子帳簿保存法で定められている電子データ保存義務などに対応しなかった場合、どのような罰則があるのでしょうか。本記事では電子帳簿保存法で注意すべき罰則や、違反になり得るリスク、違反防止対策について解説します。知らないうちに同法に違反していた、という事態を避けるためにも、ぜひ参考にしてください。

目次

罰則が強化された? 改正された電子帳簿保存法をチェック!

今回の改正では、事前承認の廃止や要件の緩和が行われる一方で、電子取引の電子保存が義務化され、義務に違反した場合や不正行為が行われた場合のペナルティが強化されています。

注意すべきポイントは以下の4つです。

改正電子帳簿保存法の注意すべきポイント

電子取引の電子データ保存義務化
税務署による事前承認の廃止
タイムスタンプ要件の緩和
検索要件の緩和



電子帳簿保存法は、規模を問わずすべての事業者(法人や個人事業主)が対象です。国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存やスキャナ保存の適用の有無を問いません。
知らないうちに違反し罰則を科されることのないよう、きちんと把握しておきましょう。

電子帳簿保存法の改正内容について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
▶電子帳簿保存法 2022年改正のポイントは?義務化への対応法も解説!

参考:国税庁 電子帳簿保存法の概要
参考:国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト

改正された電子帳簿保存法で注意すべき3つの罰則

改正された電子帳簿保存法に違反すると、罰則として「青色申告の承認取り消し」、「追徴課税や推計課税負担」、「会社法による過料」などの対象になる可能性があります。それぞれについて詳しく確認していきましょう。


1. 青色申告の承認取り消し対象となる

国税庁は「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」に「令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録について」「災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。」と記載しています。
令和4年(2022年)1月1日から令和5年(2023年)12月31日までの間については、やむを得ない事情があり一定の要件を満たした場合のみ電子データによる保存をしていなくても要件違反になりませんが、こちらは例外的な取り扱いです。

また、改正前は電信取引に関するデータを印刷して保存することが認められていましたが、現在ではデータ保存せずに印刷して保存していた場合は、青色申告の承認が取り消しになる可能性 があります。
(出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問57(国税庁)

青色申告の承認の取り消しは会社にとって不名誉で、取引先からの信用を失いかねません。それだけではなく、65万円の青色申告特別控除や、青色事業専従者給与および貸倒引当金の経費計上、純損失の繰越しや繰戻しなどの特典が受けられなくなるといったデメリットがあります。


2. 追徴課税や推計課税負担の可能性がある

保存すべき電子データを隠蔽したり改ざんしたりすることで、納税額を少なく申告したと見なされた場合には、追徴課税の対象となります。
注意したい点として、通常の法人税の過少申告で課される35%の重加算税に加えて、電子データの隠蔽など電子帳簿保存法にも違反している場合はさらに10%が上乗せされ、45%課される恐れがあります。

また、青色申告の承認が取り消されると、白色申告の扱いとなりますが、その場合、青色申告者であれば対象外だった、推計課税が適用される可能性が生じます。
所得税や法人税は本来納税義務者が税額を計算し申告するものです。しかし、帳簿がきちんと整えられていなかったり、税務調査に非協力的で税務署による実額の把握が困難だったりする場合は、税務署長が所得税や法人税の額を推測して計算できるとされていて、これを推計課税といいます。
税務署の判断により定められてしまうため、正確に計算していた場合に比べて多額の税を課される可能性があります。


3. 会社法により過料が科せられる場合も

会社法第976条には、100万円以下の過料に処すべき行為が記載されていますが、その中には帳簿や電磁的記録に関する規定が含まれています。適切な記録をしなかったり、虚偽の記録をしたりと、適切な保存をしていなかった場合、会社法違反として100万円以下の過料を科せられることがあるため、注意が必要です。 (出典:平成十七年法律第八十六号 会社法)

電子帳簿保存法の違反となるのはどんな時? 4つのリスクを紹介

電子帳簿保存法に違反して罰則を課される事態を避けるには、4つのリスクを把握しておくことが重要です。


1. 電子データの保存要件を満たせていない場合

電子データを保存していても、保存要件を満たせていないと違反になる可能性があります
例えば、紙書類をスキャナ保存する場合には、以下の要件を満たさなければなりません。

保存要件

1.スキャナ:200dpi、256階調(24ビットカラー)以上
2.スマホ:A4書類以下の一般書類の時はスマホ可。解像度387万画素以上
3.タイムスタンプ付与



電子データをクラウドでやり取りする場合など、容量削減のためシステムが自動でデータを圧縮してしまうことがあるため、注意が必要です。きちんと保存したつもりでいても、要件を満たさなければ罰則対象となり得ます。

電子帳簿保存法の改正により、スキャナ保存後の紙原本は直ちに廃棄が可能となりました。ただし、実際の書面に記載されている事項をデータ上で正しく把握できることが求められます。そのため、折れ曲がりや歪みなどによりきちんと読み取れない箇所がないか、確認することが必要です。

タイムスタンプ導入には、タイムスタンプ付与サービスなどの利用が必要です。しかし会社の業務フローやシステムによってはそのようなサービスの導入が難しいこともあります。そのよう場合は、訂正や削除の防止に関する「事務処理規定」を作成し運用することでも、電子帳簿保存法が求める要件を満たすことは可能です。

保存した電子データにタイムスタンプが付与されていない場合にもリスクがあります。「2. 追徴課税や推計課税負担の可能性がある」でも言及しましたが、改ざんなどの不正があると見なされた場合は重加算税に10%加えられます。

参考:国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存」
参考:国税庁 電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】問3
参考:国税庁 各種規程等のサンプル


2. 電子データの検索要件を満たせていない場合

電子帳簿保存時の要件として求められている検索機能が認められるためには、「取引年月日」「取引先名」「取引金額」の3項目が検索条件として設定できるようにしなければなりません。また、検索項目は二つ以上を組み合わせて設定できるようにすることも求められています。要件を満たすために、ファイル名は「20230101_ABC株式会社_1000000」のように、日付・取引先名・金額を一定の順序で設定するようルールを決めることが必要です。


3. 紙書類の保存期限が超過している場合

電子取引ではなく、紙の書類で受け取ったものをスキャナ保存する場合には、タイムスタンプを「最長で2カ月とおおむね7営業日以内」に付与しなければなりません。紙の状態で長く放置していては、スキャン保存する前に改ざんされてしまう可能性がぬぐえないことから、国税庁は書類を受領したらできるだけ早く電磁的な記録にすることを求めています。
その都度処理するのは手間なので四半期ごとにまとめて付与する、といった対応は基本的に認められないため、注意しましょう。


4. データの保存期間を満たしていない場合

保存義務期間中に、書類のデータを誤って紛失したり破棄したりといったことがあると、違反対象となります。
例えば、請求書や見積書は、法人であれば7年、個人事業主であれば5年保管しなければなりません(帳簿であれば個人事業主でも7年保管が必要です。) なお、この保存期間の起算点は、書類の発行日や受領日ではないことにも注意してください。法人はその事業年度における確定申告の提出期限の翌日、個人事業主は確定申告の期限日の翌日です。法人の確定申告提出期限はその会社の事業年度終了日によって決まるため、保存期間の起算点も会社により異なります。

電子帳簿保存法で罰則を受けないための違反防止対策は?

これまでに確認してきた要件を満たし、リスクを避けるためには、どのような対策をしたらよいのでしょうか。ここからは、罰則を受けないために備えておくべき違反防止対策を紹介します。


1. 電子データの取り扱いについて社内のガバナンス・コンプライアンスを強化する

電子データが正しく保存され、改ざんや情報漏洩が起こらないようにするためには、社員のコンプライアンス意識を強化することが重要です。コンプライアンス教育は、普段データや書類を扱う担当者だけでなく、社員全員に対して行いましょう。
コンプライアンス強化のためには、情報ガバナンスの構築が求められます。企業が持つデータ類およびそれを取り扱うシステムを情報資産としてとらえたうえで、社員教育や社内ルールの見直しを行い、運用体制を確立することが必要です。


2. 電子データを簡単に保存できる環境を整える

電子データを保存するたびに、要件をきちんと満たしているか確認するというのは、現実的ではありません。違反を防ぎ罰則を受けないようにするために、要件を満たしながら電子データを簡単に保存できるような環境を整えましょう。違反につながりそうなところがないか業務フローの見直しを行う、電子データ化のシステムを導入する、といった対応が効果的です。

会計ソフトや会計システムを使用すると、電子帳簿保存法で求められる対応を簡単に行えます。
電子帳簿保存法への対応について定められた猶予期間は2023年12月31日 までです。環境の整備は一朝一夕でできることではありません。猶予期間内に準備を終えるためには、早めに対策に着手しましょう。


まとめ

2022年に改正された電子帳簿保存法に違反した場合の罰則には、青色申告の承認取り消し、追徴課税や推計課税負担、会社法による過料などがあります。罰則を受けないためには、受け取った紙書類が求められる保存期限内に正しくデータ化 され、電子データは保存要件や検索要件、保存期間を満たして保存されるような環境の整備 が必要です。


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