「DX動向2025」を読み解くと、国内企業のDXの現在地がわかります。本記事では、「DX動向2025」から見えてきた中小企業の課題やDX推進のトレンド、そして中小企業がDXに取り組む際に導入しやすい身近なツールに搭載できるAI機能について紹介します。自社のDX推進を考える上でぜひ参考にしてみてください。
DX動向2025の概要
デジタル社会の動向調査や分析などに取り組む独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2025年6月に「DX動向2025」を公表しています。この資料では日本国内の動向だけではなく、日本・アメリカ・ドイツの3か国の比較分析についての内容も盛り込まれています。
同資料によると、何らかの形でDXに取り組んでいると回答した国内企業は 回答者全体の77.8%にものぼっています。これはアメリカと同等程度の水準であり、ドイツよりも高い割合です。
一方、従業員規模別でみると「1,001人以上」の国内企業の96.1%がDXに取り組んでいるのに対して、「100人以下」の企業では46.8%となり2倍以上の差があります。これと比較して、アメリカやドイツでは、従業員数が「301人以上~1,000人以下」の企業においてDX推進に取り組む割合が高くなっています。
これらの調査結果から、日本では企業規模が大きいほどDXに取り組んでいるのが現状であり、中小企業におけるDXへの取り組みの遅れが課題として浮き彫りとなっています。
参照元:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)|DX動向2025(本文)
参照元:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)|DX動向2025(データ集)
中小企業が抱えるDXを推進する上での課題
なぜ、国内の中小企業においてDXへの取り組みが進まないのでしょうか。ここでは、中小企業が直面する具体的な問題点を3つ取り上げます。
経営層がDXに取り組むメリットを理解できていない
そもそも経営層が「自社の業種・業界には必要ない」「従来の方法で対応可能」と捉えており、経営層がDXに取り組む意義を十分に理解していない点が挙げられます。
これには、DXの取り組みに精通した人材が不足し、経営層へ的確な助言を行える体制が整っていないことも影響しています。経営層の意識変革がなされなければ、DX推進の遅れによって経済的損失が拡大し、いわゆる「2025年の崖」に直面するリスクも高まります。
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社内に情報を収集・整理できる体制を整えていくためには、アスクル株式会社が運営している「ビズらく」のようなサイトを活用しながらトレンドを定期的に確認し、他社の事例から学ぶことが課題解決の糸口となります。
参照元:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)|DX動向2025(本文)
DX推進のための人材が不足している
「DX動向2025」で「DXに取り組んでいない」と答えた中小企業の約3割が理由のひとつとして挙げているのが人材不足です。必要な知識を持つ人材が社内にいないことで、自社におけるDXの方向性や導入すべき技術、適切な進め方を判断できず、結果として取り組みが後回しになる状況が生まれています。
さらに、専門人材を新規採用しようとしても、コスト面や採用競争の厳しさから確保が難しく、課題を一層深刻化させています。
参照元:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)|DX動向2025(本文)
DX推進のトレンドはAI活用
これまでのDXは、大企業が率先して老朽化したシステムからの移行や、内製化による開発体制の強化といった取り組みを進めてきました。
しかし近年は、安価で利用しやすくなった生成AIの普及が大きな潮流となっています。アメリカでは8割弱、ドイツでは7割弱の企業が「導入した」または「導入を検討している」のに対して、日本は「関心はあるが予定はない」と回答した割合が、3か国間でも突出して高い状況です。
現在、チャット型AIサービスとして提供されているGeminiアプリが利用可能なGoogle Workspaceといったグループウェアに生成AIが搭載されるなど、導入コストや利用環境へのハードルは大幅に下がってきています。この変化は、日常業務の延長でDXを推進できる利点をもたらし、特に中小企業にとっては今後取り組みを加速させる大きな契機となると考えられます。
参照元:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)|DX動向2025(データ集)
AI活用によって生まれるメリット
AI活用は業務効率化にとどまらず、事業活動の領域を広げる大きな可能性を持っています。ここでは3つのメリットについて取り上げます。
業務の効率化
文書作成や問い合わせ対応、定型入力といった人に頼っていた作業が自動化・半自動化され、担当者は判断や確認といった重要度の高い業務に注力できるようになります。
また、時間を要していた処理が高度化・高速化されます。例えば、Excelの計算も生成AIの補助で高度化され、関数設計から集計支援、データ入力の自動補完、集計結果の要約や可視化までを効率的に進められます。
ひいては一人あたりの処理能力が底上げされるため、慢性的な人材不足やスキルの偏在といった課題に対する現実的な解決策としても有力です。

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詳しくはこちらコスト削減の実現
AI活用による業務効率化が進めば、人手を必要としていた業務の一部を自動化し、人的リソースの削減が可能となります。特にデータ入力や定型的な分析業務ではAIの補助が有効で、これまで時間やコストをかけていた作業を大幅に効率化できます。
人的リソースをコア業務やより高度な業務に配置できるようになれば、組織全体の人材活用が最適化され、結果として生産性向上やコストのスリム化といった将来に向けた企業の構造改革にもつなげられます。
製品・サービスの高付加価値化
定型業務の効率化やコスト削減が進み、人材を本来注力すべき領域に再配置できる体制が整うと、研究開発や顧客対応といった付加価値を生む活動に経営資源を集中できるようになります。
さらに、製品やサービスの品質向上のための工夫や新たな取り組みに時間を割けるようになることが、企業の競争力強化にも直結します。このような流れは顧客満足度の向上を後押しし、結果として製品やサービス全体の高付加価値化を実現します。
身近なツールで始める、生成AIを活用したDX推進
DXの取り組みは、日常的に利用しているツールでAIを活用してみることから着手できます。グループウェアやオフィスソフトに搭載されたAI機能を用いれば、専門的な知識がなくても効率的にDX推進へとつなげることが可能です。
Microsoft Copilot for Microsoft 365
職場でMicrosoft製品を利用している場合、有力な選択肢となるのがオプションプランの Microsoft Copilot for Microsoft 365(通称:コパイロット)です。
CopilotはWord、Excel、PowerPoint、Outlook、Teamsなど幅広いソフトウェア上で動作し、資料作成や要約、データ分析、議事録の整理など日常業務を横断的にサポートします。既存のMicrosoft製品に組み込まれているため、新しい操作を覚える負担を最小限に抑えながらスムーズに導入できます。

Microsoft 365
Word、Excel、PowerPointなどがまとまったオールインワンサービス!
常に最新バージョンで使えるので、Officeの入れ替え作業はありません。
オプションプランのCopilot for Microsoft 365の追加で日々の業務をより効率化!
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詳しくはこちらGemini for Google Workspace
近年はOffice製品を取り入れず、Googleのスプレッドシートやドキュメントを活用して業務を進める企業も増えています。そのような場合、ワークフローに自然に組み込めるAIの選択肢として有力なのが Gemini for Google Workspace(通称:ジェミニ)です。
Google Workspace上で利用できる生成AI「Gemini(ジェミニ)」は、Gmailやドキュメント、スプレッドシート、スライド、Meetなどに搭載され、要約や下書き作成、データ整理といった作業を効率的に実行できます。

Google Workspace
Googleがメールやスケジュール、Web会議などを提供するサービス。
1プランで10種類以上のサービスが利用できます。
チャット型 AI サービスとして提供されているGeminiアプリも、Google Workspaceで利用可能です。
中小企業がITツールを導入する際には「IT導入補助金」の対象となる場合があり、ビズらくで申請手続きも有償でサポートしています。これからDX推進や生成AIの導入を検討する企業は、あわせてIT導入補助金の活用を検討することをおすすめします。

ビズらくIT導入補助金サポート
補助金申請からITツールの導入・活用、事務局への報告までをワンストップで支援する中小企業・小規模事業者様向けサービス。IT導入支援事業者として経験豊富な専門スタッフが、お客さまの申請業務の負担を軽減すると共に、豊富なノウハウを活かし採択率の向上を強力にサポートします!
詳しくはこちらまとめ
「DX動向2025」から、日本の中小企業が未だDXへの取り組みがスタートできていない現状が垣間見えています。しかし、AI活用によってDX推進へのハードルが下がっているのも事実です。まずは身近なツールに目を向けて、DXに取り組んでみてはいかがでしょうか。