電子帳簿保存法の基本と「優良な電子帳簿」の税務メリット

2023年の税制改正による電子帳簿保存制度の見直しに伴い、「対応が必要なのに、まだ不十分」という企業も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、電子帳簿保存法の基本と、「優良な電子帳簿」に該当する場合の税制上の利点について詳しく解説します。

目次

電子帳簿保存法の基本をわかりやすく解説

電子帳簿保存法は、国税に関する帳簿の保存にかかるマンパワーやコストの削減、作業の効率アップなどを目的として作られています。法の設立自体は1998年なので、決して新しくはありません。しかし、2022年1月1日に改正電子帳簿保存法が施行され、2023年にさらに変更されたこともあり、昨今取り上げられることが増えています。

何度か見直しが行われている法律なので、国税庁もさまざまな方法で説明していますが、「公文書はわかりにくい」と感じる人も多いでしょう。

この法律は、保存すべき帳簿や書類に電子データを用いて効率アップすることを目指して作られており、電子帳簿などによる保存、スキャナ保存、電子取引データ保存など、複数の方法があります。

そのうち電子帳簿保存では、会計ソフトや仕分けソフトなどで発行した書類や情報を対象としています。また、紙の書類を使った場合、スキャンによって電子データ化して保存しなければなりません

電子取引データ保存は契約書や注文書、領収書や送り状、請求書や見積書などを電子データでやり取りした場合の保存方法で、法人でも個人でも対応が必須とされています。

2023年には税制改正が行われたこともあり、関連して電子帳簿保存制度の見直しも行われました。この改正は2024年1月から適用されることとなっており、スキャナ保存の要件緩和や、「優良な電子帳簿」の対象となる帳簿の範囲が具体化されています。

2024年1月以降は、電子データで取引した書類は紙ベースでの保存ができなくなるため、もし未対応であれば早急に対応しましょう。

電子帳簿保存法への対策

この法律に則り事務処理を行うためには、以下の4つが必要とされています。


(1)システム概要に関する書類の備えつけ
(2)見読可能装置の備えつけ
(3)検索機能の確保
(4)データの真実性確保

(1)は、市販のソフトウェアを使うのであれば、その仕様書や操作マニュアルを見られるようにしておけば条件を満たせます。また(2)は、データ確認用のソフトウェアやディスプレイを指すので、電子帳簿保存を導入しようとしている個人や企業にとって障壁とはなりません。

ここまでの説明を踏まえて、以下では(3)と(4)についてそれぞれ解説します。


検索機能を確保する

電子帳簿を法律に沿って活用するためには、以下のような、データを必要に応じて検索できる機能を充実させなければなりません。


・取引の日付、取引の金額、取引先ごとの検索が可能なこと
・取引の日付と取引の金額については、範囲を指定した検索が可能なこと
・検索の際に任意の2項目以上を組み合わせた検索が可能なこと

ただし、税務職員が要求した際、必要なデータが速やかにダウンロードできるようにしてあれば、2つ目と3つ目は対応しなくても構いません


データの真実性を確保する

情報を電子化し保存しても、その情報が真実でない場合、意味を成しません。この場合の「真実」とは、取引終了後に故意に書き変えられたりしていないオリジナルのものであることを意味しています。そして、改ざんされない環境を構築するために、具体的には以下4つの条件からひとつ以上を満たすよう取り決められています。


・タイムスタンプがある状態でデータを受領する
・取引情報受領後、情報に対して速やかにタイムスタンプを与え、保存担当者や管理者の情報を確認できる状態にできる
・訂正や削除の履歴が「見える化」できる、あるいは訂正や削除を受けつけないシステムで情報の受領や保存を行うこと
・訂正や削除を防止できる社内規定を盛り込んで、システムを運用すること

ちなみにタイムスタンプとは、保存する電子データに作成時刻の情報とハッシュ値(特定のアルゴリズムを用いて作られた暗号情報)を付与することで、データの改ざんなどが行われていないことを証明するものです。


電子帳簿保存法の導入方法

この法律に沿ったシステムを導入し、円滑に運用を続けていくためには、電子データを使って取引を行う場合と、紙データを使っている場合とで、それぞれ異なる対応をすることが要求されています。以下、それぞれに必要な対応をまとめます。


電子データでやり取りする場合

取引情報をすでに電子的な情報として扱っている場合、まず組織の中で、電子データの使われ具合を把握する必要があります。

例えば、領収書や請求書をどのように発行・受領しているか、あるいはそれらの書類の件数や保存方法などを確認し、新たなシステムを導入した後、どのように扱っていくかを決定しなければなりません。

また、情報の受領や発行の管理をするだけでなく、社内で日常的に行っている承認の流れや保管なども、業務フローを新たに作らなければなりません。そして新たな業務フローは、取引先や社内での運用を周知徹底してこそ、業務の効率アップにつながります。

さらに、システムのマニュアルなど、運用する上で必要な書類の整備や、データに対してタイムスタンプを付与するかどうかも検討すべき内容です。


紙データでやり取りする場合

これまでの日常業務の中で、紙の書類が使われている比率が高いのであれば、電子情報を中心としている場合とは違った対応が必要です。

まず紙で発行された書類は、スキャンして保存することが電子帳簿保存の必須要件です。スキャンしてデータ化する手間はあっても、情報の保存をすませた後は、紙の書類を廃棄することも可能となります。そのため、紙資料の保存スペースに気を配る必要がなくなり、管理にかかっていたマンパワーを削減できる利点もあります。

ただし、スキャンして保存する場合には、解像度が200dpi以上のスキャナで読み取らなければなりません。加えて、カラー画像は赤、緑、青がそれぞれ256階調以上であることが指定されています(金額や物品の流れに関連しない一般書類はグレースケールでもよいとされている)

また、処理サイクルの方法には以下の2種類があり、どちらを採用するかの決定が求められます。


処理サイクルの方法
① 早期入力方式:書類受領から電子化や保存までの日数を決める
②業務処理サイクル方式:締め日などの決まった日から、定めた日数内に電子化と保存を行う

さらに、決定事項を反映して新しい業務フローを整備し、組織の内部やパートナー企業などに周知徹底することも欠かせません。

優良な電子帳簿とは

国税庁は電子帳簿保存法に関連して、「優良な電子帳簿」という言葉をしばしば使っています。「優良な電子帳簿」の要件を満たせば、税務上のメリットも得られるので、ぜひ「優良な電子帳簿」がどんなものかを把握してください。

「優良な電子帳簿」とは、法律が定める条件を満たして保存された電子帳簿のことです。対象となる帳簿は、仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿とされています。その他必要な帳簿の中には、売上帳や仕入帳、経費帳や所得税の賃金台帳、売掛帳や買掛帳、手形の記入帳や法人税の有価証券受払い簿、固定資産台帳や繰延資産台帳などが含まれます。

「優良な電子帳簿」の要件としては、以下の3点が求められます。

  • 訂正や削除を行った場合の履歴が確認できるようになっていること、または訂正や削除ができないシステムとなっていること
  • 関連があるほかの帳簿との相互確認ができること
  • 検索要件を満たしていること(「検索機能を確保する」の項を参照)

優良な電子帳簿の税務メリット

電子帳簿保存法の内容を知り、「優良な電子帳簿」の条件を満たせば、以下のような税務上のメリットを受けられます。


過少申告加算税の軽減措置

過少申告加算税とは、確定申告時に提出した納税額が、本来の数値より小さかった場合に課せられる税金です。

過少申告加算税は、増差額(申告税額と本来の税額の差)の10%です。また、増差額が「確定申告時に提出した納税額」あるいは50万円よりも大きい場合、「確定申告時に提出した納税額」あるいは50万円を超える部分の加算税は15%と定められています。

ただし、「優良な電子帳簿」の該当要件を満たしていれば、過少申告加算税の税率が5%に軽減されます
参照:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました 」


青色申告特別控除額の増額

「優良な電子帳簿」の該当要件を満たしている場合、青色申告特別控除額が55万円から65万円に増額され、10万円多く控除を受けられます。詳しくは、国税庁のリーフレット をご参照ください。

参照:国税庁 65万円の青色申告特別控除についてのリーフレット

まとめ:正しく電子帳簿保存法を理解し対応しよう

電子帳簿保存法の基本や昨今改定された内容のほか、優良な電子帳簿の利点をまとめました。電子帳簿保存法への対応には面倒な点もありますが、しっかり対応すれば税務上の利点もあります。本記事の内容を参考に、ぜひ適切な処理を行ってください。
※なお、本記事は作成日(2023年11月)時点の法令に基づいて執筆しています。

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