総務は組織の運営を支える重要な部門であるにもかかわらず、「なんでも屋」や「雑用係」と見なされることが少なくありません。本記事では、総務の現状と本来あるべき姿、バックオフィス業務を改善するメリットについて解説し、さらに業務効率化の方法と「評価される総務」になるための実践ポイントを紹介します。
なぜ総務は“なんでも屋”と思われるのか?バックオフィスの現状と課題
企業のバックオフィス部門の中でも、とりわけ総務は「なんでも屋」や「雑用係」と見られがちです。これは総務が、各部門が担当しきれない業務を幅広く担っているためです。総務の業務は多岐にわたります。例えば、備品管理や消耗品の補充といった日常業務から、組織の資産管理、さらには採用イベントや株主総会など社内外の行事の企画・運営まで含まれます。加えて、企業コンプライアンスやリスクマネジメントといった高度な専門知識を必要とする分野を担当することも少なくありません。
しかし、その活動が社内に十分伝わらないため、「なんでも屋」「縁の下の力持ち」といったイメージにとどまり、成果が見えにくく正当な評価につながりにくいのが現状です。また、総務が抱える課題としては、業務範囲が広過ぎるがゆえに効率化が進みにくいことや、特定の担当者に依存する「属人化」が起こりやすいことも挙げられます。これらは組織全体のパフォーマンス低下やリスクにもつながるため、改善が急務とされています。
総務の本来あるべき姿とは?
総務の本来あるべき姿は、事務処理やサポート業務の枠を超えて、企業価値の創造・生産性向上・コスト最適化を戦略的に推進する「戦略総務」です。従来のように現場からの要請に応じるだけの受け身の存在ではなく、課題を自ら見つけて改善をリードする主体的な部門への転換が求められています。そのためには、まず業務効率化を進め、戦略的な活動にリソースを振り向けられる体制づくりが欠かせません。
バックオフィス業務を改善するメリット
バックオフィス業務の改善は、総務部門にさまざまな効果をもたらします。まず、業務を効率化することで限られた人員でも業務品質を維持・向上でき、慢性的な人手不足の解消につながります。また、単なる事務作業に追われるのではなく、能動的に課題を発見・解決する活動へシフトすることで、従業員満足度の向上や働きがいのある職場環境の実現が期待できます。
さらに、業務改善によって細かな部分にまで目が届く体制が整うため、組織内での不正や業務ミスを早期に発見できる点も大きなメリットです。結果的に、企業の信頼性向上とガバナンス体制の強化が実現し、持続可能な経営基盤の確立に寄与します。
バックオフィス業務を効率化する方法
バックオフィス業務を効率化するためには、いくつか有効な方法があります。例えば、従来のメール中心の情報共有からリアルタイム対応が可能なビジネスチャットを導入すれば、部門間の連携が強化されます。また、不得意な分野や専門性の高い業務領域をアウトソーシングすることで、限られた経営資源をコア業務に集中させることが可能です。さらに、勤怠管理システムや会計システム、電子契約サービスといった専用ITツールを活用することで、業務のデジタル化を推進し、オフィス業務の負荷軽減や人為ミスの削減につなげられます。いずれにしても、総務ではこのようなバックオフィス業務の強化・効率化することで、定型業務を減らし、属人化を解消しながら、コア業務への工数を確保することが重要です。
バックオフィス業務の効率化する方法についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。

バックオフィス業務とは? 主な業務一覧や効率化のコツ
バックオフィス業務の効率化は、企業の経営基盤を支える重要な施策です。本記事では、バックオフィスの役割や業務一覧、よくある課題(繁忙期の人手不足・属人化・入社手続きの煩雑さ)を整理し、改善フローや効率化のポイントを具体的に紹介します。
詳しくはこちら「評価される総務」になるための実践ポイント
総務の仕事は、オフィスの施設管理や備品管理といった日々の雑務をこなすだけでは、なかなか評価されにくいのが現状です。これからは、経営者の視点や従業員の立場を踏まえ、組織全体にどれだけ貢献できているかという成果も求められます。ここでは、「評価される総務」へと成長するために取り組むべき実践ポイントを紹介します。
総務主体で働き方改革を進める
多様な働き方が広がる中、総務が主体となって働き方改革を推進することが重要です。例えば、テレワークやフレックスタイム制を導入する際には、単に制度を用意するだけでなく、業務継続性を担保するマニュアルの整備や仕組みの改善をあわせて進めることが不可欠です。こうした取り組みを通じて、組織全体の生産性向上に貢献でき、従業員の信頼を得ることで総務の存在価値も高まります。
ITツール導入で全社の業務効率化をリードする
総務部門が導入したITツールを全社に横展開することは、効率化の大きな推進力となります。例えば、勤怠管理システムを導入して労務の工数削減に成功したのであれば、その仕組みを現場部門にも広げることで、打刻ミスや申請漏れの防止につながります。また、経費精算システムによるペーパーレス化は、経理部門だけでなく利用部門の利便性を高め、同時にコスト削減にも効果的です。このように、総務がITツールを率先して導入・展開することで、組織全体のDXを加速させ、生産性向上に貢献します。
なお、ITツールの導入を進める際には、予算取りが不可欠です。また、近年ITツールを業務に導入する際に活用できる補助金があります。以下の記事では予算取りのポイントやIT導入補助金についてわかりやすく解説しているので、あわせてご覧ください。

社内の予算策定とは?サービス導入の流れと予算取りのポイントを解説
企業の予算策定は、サービス導入や業務改善を成功させるための重要なステップです。本記事では、社内予算策定の基本から、サービス導入時の予算取りの流れ、具体的なツール例と費用目安までを詳しく解説します。
詳しくはこちら
【2025年】IT導入補助金とは?申請のポイントをわかりやすく解説
2025年のIT導入補助金について、制度の仕組みや申請方法、対象企業・ITツールの条件、申請の流れ、採択のポイントまでを一通り解説しています。初めて申請する中小企業が迷わず進められるよう、準備や申請、それぞれのポイントもまとめました。
詳しくはこちら働きやすいオフィス環境への整備を進める
評価される総務になるためには、多様な働き方に対応した快適な職場づくりが欠かせません。例えば、サーバー室の横は騒音や温度管理が難しいため執務スペースにせず、物置やバックヤードとして活用するなど、効率性と快適性を両立したレイアウト設計が求められます。
また、リモートワークやフレックス体制を整えるために、総務が情報システム部門と連携し、Web会議ツールやリモートアクセス環境の整備を進めることが重要です。こうした整備を総務が主導することで、従業員が安心して業務に集中できる環境が実現し、結果的に生産性向上や企業の魅力向上にもつながります。
オフィス環境の整備についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

ビズらくではじめる働き方改革!あなたの職場はどこから始める?
本記事では、働き方改革の基本から、中小企業の現状と課題、そしてZoomや勤怠管理システムなどを活用した具体的な取り組み方法までをわかりやすく解説。属人化や人材不足を乗り越え、持続可能な職場づくりを目指すヒントが満載です。
資料をダウンロードする福利厚生・社内制度を充実させる
多様な働き方を実現するためには、制度面での整備も必要です。特にテレワークを導入する際には、対象となる従業員や費用負担、評価制度を明確化することで、公平性と納得感を高められます。さらに、育児・介護支援、メンタルヘルス対策などの福利厚生を充実させることで、従業員満足度の向上や離職防止につながります。こうした制度を総務が主導して整備することで、働き方改革を現実的に進められるとともに、企業全体の魅力向上にも寄与します。
まとめ
総務は雑務を担うだけの部門ではなく、企業価値の向上や働き方改革を推進する戦略的な役割を担える部門です。そのためには、従来の「なんでも屋」から脱却し、業務効率化やDXを通じて、能動的に経営へ寄与できる体制を整えることが求められます。


