営業やマーケティング担当者に向けて、タッチポイント(顧客接点)の基本的な定義とその役割や意義をわかりやすく解説。ネットワーク社会に求められる、効果的なタッチポイント強化策を、具体的な例とともに詳しく紹介します。また、実践に役立つポイントも解説します。
タッチポイント(顧客接点)とは?チャネルとの違い
顧客体験を考えるうえで、「タッチポイント」と「チャネル」は混同されやすい概念です。しかしこの違いを正しく理解していないと、顧客に届けたい情報にズレが生じることもあります。 ここでは、両者の定義と関係性を整理しながら、タッチポイントの設計につなげるための視点を解説します。
定義と基本概念
タッチポイントとは、「触れる(touch)」と「点(point)」を組み合わせた言葉で、企業と顧客が接触する瞬間や場所を指し、その質が顧客の感情や購買意欲に影響します。タッチポイントは大きくオンライン(広告閲覧、Webサイト訪問など)とオフライン(店舗接客、電話応対、展示会など)に分かれますが、どちらも顧客の満足度向上やロイヤルティの形成に欠かせません。
チャネルとの違い
チャネルは商品や情報を届ける経路であり、メール、SNS、店舗、テレビ広告などを指します。タッチポイントはそのチャネルの中で、顧客が実際に企業と触れ合い反応を示す瞬間です。例として、メールはチャネルですが、開封して読むという行動がタッチポイントにあたります。
また、各チャネルには特性や得意分野があります。例えば、SNSは若年層とのライトな接点づくりに。店舗は商品の質感や対面接客を重視する顧客に適しています。メールは継続的なフォローに向いており、テレビ広告は広範囲への認知拡大に有効です。こうした各チャネルの特長を理解し、最適なタッチポイント設計を行うことが顧客体験向上の鍵です。
タッチポイントを強化すべき理由
現代の市場では、価格や製品機能だけでの差別化が難しくなってきており、顧客が実際に体験する、「体験価値」を高める必要があります。タッチポイントの強化は、顧客との接触の質と量を高めることができ、顧客満足度やブランドの信頼を向上させられます。これにより、リピート購入率や顧客生涯価値(LTV)が向上し、短期的な販促効果にとどまらず、長期的に顧客との関係を深められます。日々の接点を継続的に最適化し、体験価値を向上させることは、安定した収益基盤と持続的成長の支えになります。
タッチポイントの主な種類
タッチポイントは大きくオンライン(デジタル)とオフライン(リアル)の2つに分けられます。これらは顧客の購買プロセスに応じて役割を変えながら登場するため、「購入前」「購入のタイミング」「購入後」の3つのフェーズに分けて、代表的なタッチポイントを整理します。
購入前(認知・興味関心)タッチポイント
顧客が商品やサービスを知り、関心を持つ段階。認知度の向上や興味喚起が目的のタッチポイントが多くなります。
オンライン
Webサイト訪問、SNS投稿の閲覧、Web広告、YouTube動画、メールマガジン など
オフライン
テレビCM、新聞・雑誌広告、展示会、チラシ、口コミ、看板・POP など
購入のタイミング(比較・検討・購入)タッチポイント
購入に踏み切る段階では、不安の払拭や後押しとなる情報提供が鍵になります。信頼感を与えるタッチポイントの設計が重要です。
オンライン
ECサイト、オンライン商談、チャットボット、レビューサイト、カート画面 など
オフライン
実店舗での接客、対面商談、体験型イベント、電話問い合わせ など
購入後(フォロー・再購買)タッチポイント
この段階では、満足度を高めてリピートやロイヤルティにつなげるタッチポイントが中心となります。
オンライン
サンクスメール、SNSフォロー、ファンサイト、オンラインサポート、FAQページ など
オフライン
アフターサービス対応、カスタマーサポート窓口、DM送付、ユーザーイベント など
タッチポイントは、オンラインとオフラインのどちらか一方ではなく、顧客の行動段階やニーズに応じて組み合わせて設計することが重要です。
カスタマージャーニーを活用したタッチポイント設計の基本
カスタマージャーニーマップとは、顧客の購買行動や意思決定の流れを表したもので、これを活用してタッチポイントを計画的に設計します。

まず、ターゲットとする顧客の「ペルソナ」を明確にします。次に、ペルソナが商品やサービスを知り、興味を持ち、購入を検討し、実際に購入し、その後リピートするまでの一連の流れを段階的に整理します。
それぞれの段階で顧客がどんな情報や支援を必要としているか、どのような悩みを抱えているかを考え、適切なタッチポイントを設定します。優先順位をつけて整理し、施策の効果を測るために具体的な評価指標(KPI)を設けます。こうした設計・実行後は、PDCAサイクルを継続的に回し、最適化を行います。
デジタル施策によるタッチポイントの強化事例
現代のタッチポイント強化では、 SNS、チャット、オンライン商談という3大デジタルカテゴリの活用がポイントです。
LINE公式アカウントでのCanva活用──ビジュアル改善で売上アップへ
LINE公式アカウントのリッチメニューやビジュアルをより魅力的にするため、多くの企業がデザインツール「 Canva(キャンバ) 」を導入しています。リッチメニューとは、LINEトーク画面の下部に表示されるカスタマイズ可能なボタン式メニューのことです。画像やテキストで構成され、商品ページへの誘導や予約ボタン設置など、ユーザーのアクションを促す重要な接点です。
Canvaは初心者でも使える多彩なテンプレートや素材が豊富で、印象的なビジュアルを簡単に作成可能です。
Canvaで作成した LINE公式アカウントのリッチメニューイメージ

例えば公式LINEを運用する企業の中には、リッチメニューのデザインを工夫した結果、ユーザーの操作性や商品の認知度が向上し、売上が伸びたケースもあります。
さらに、Canvaは公式LINEだけでなく、XやInstagramなどのSNS用画像作成にも使えるため、多チャネルのタッチポイント強化に役立ちます。

Canva(キャンバ)
簡単操作で誰でもあらゆるデザインを作成できるビジネス版「Canva」
豊富なテンプレートや素材が用意されているため、ドラッグ&ドロップで誰でも簡単に
プロクオリティのプレゼンテーション、動画、ポスター、メニューなどあらゆるものをデザインできます。
予約・1to1チャットの自動化──LINE WORKSで実現した業務効率
予約対応や1to1チャットの業務を効率化するために、「 LINE WORKS 」を活用しているサロンも見られます。例えば、予約一元管理システム「かんざし」とLINE WORKSを連携させることで、スタッフがスマートフォンからリアルタイムで予約状況を確認・更新できるようにし、従来の手作業による管理負担を軽減しているケースがあります。顧客へのメッセージ配信を自動化することで、来店前のリマインドやキャンペーン情報などを個別に最適なタイミングで届けられるようになり、リピーターの獲得にもつながっています。
さらに、担当スタイリストの空き状況をLINE上で確認し、そのまま予約できる仕組みも取り入れられています。予約情報は店舗側の管理システムと連動し、重複や入力ミスを防止。顧客にとっても使いやすく、信頼性の高い体験が提供されています。
LINE WORKSを活用した予約管理やコミュニケーション自動化によって、スタッフの業務負担を軽減しながら、顧客満足度の向上を目指す取り組みを行っているサロンも増えています。
顧客商談の“取りこぼし”を防ぐ──Zoomによる接点の質向上
顧客との商談機会を逃さず、質の高い接点を確保することは顧客満足(CX)向上に欠かせません。この点で、安定した接続と多彩な機能を誇る「 Zoom 」は多くの企業に採用されています。
例えば、遠隔地の顧客とも気軽に顔を合わせられるリモート商談で、商談機会の拡大と案件の取りこぼし防止に成功した企業もあります。画面共有や録画、チャット機能により商談内容を正確に伝えられるため、記録と振り返りも容易です。
さらにCRMやスケジューリングツールとの連携で営業活動全体の効率化が進み、担当者が顧客対応に専念できるようになるケースもあります。
タッチポイント強化に役立つツールを比較
顧客との良質な関係を築くためには、まずタッチポイントを“つくる”こと、そしてつくったタッチポイントを“活かす”ことの両方が欠かせません。そのためには、顧客との直接的なコミュニケーションを可能にする「タッチポイントを創出するツール」と、質や効率を高める「補完ツール」の両方が必要です。ここでは、これまで紹介してきたツールを中心に、タッチポイント強化に有効な主要ツールを紹介します。
タッチポイントを創出するツール
LINE WORKS
1to1チャットによる予約対応や個別コミュニケーション、社内連携、スケジュール共有、通知の仕組みなどに活用できます。美容業界では、予約管理システムと連携させることで管理効率化に貢献した実績もあります。
Zoom
オンライン商談、アフターサポート、遠隔での顔合わせなど、場所を問わない高品質なコミュニケーションを実現できます。画面共有や録画、チャット機能による情報共有にも対応しており、商談〜サポートまで幅広い業務に活用可能です。
タッチポイントの質や効率を高める補完ツール
Canva
LINEやSNSで使用するビジュアルコンテンツを、簡単かつ高品質に作成できるデザインツールです。初心者でも使いやすく、テンプレートを活用することで効率的に制作が進められます。

Canva(キャンバ)
簡単操作で誰でもあらゆるデザインを作成できるビジネス版「Canva」
豊富なテンプレートや素材が用意されているため、ドラッグ&ドロップで誰でも簡単に
プロクオリティのプレゼンテーション、動画、ポスター、メニューなどあらゆるものをデザインできます。
MA/CRMツール(マーケティングオートメーション・顧客管理)
顧客情報をもとに、最適なタイミングとチャネルで自動的にアプローチできるツールです。メール配信の自動化や行動データの活用により、タッチポイントの質や継続性を高める役割を担います。
企業の規模や目的に応じてさまざまなツールがあり、例えばHubSpotのようなCRM機能を備えたサービスが代表的です。
顧客体験を高めるタッチポイント戦略を策定しよう
顧客とのタッチポイントは質の高い体験が重要です。まずは現状を把握し、効果の大きいタッチポイントから優先的にリデザインします。そのうえで目的に合ったツールを導入して連携を深め、顧客体験の質と効率を強化しましょう。これにより、多角的に顧客との関係を構築できます。